アラムコが公開価格を発表 予想幅の上限
【ドバイ=岐部秀光】サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは5日、新規株式公開(IPO)の公開価格を32リヤル(約930円)に設定したと発表した。アラムコが想定した目標価格帯の上限に相当し、調達額は256億ドル(約2兆7900億円)以上と、2014年の中国アリババ集団(250億ドル)を上回る史上最大のIPOになることが確実になった。
公開価格にもとづくアラムコの時価総額は1兆7000億ドル。米アップル(約1兆1000億ドル)を抜いて世界最大となる計算だ。
発行済み株式2000億株の1.5%をサウジ証券取引所タダウルに上場する。機関投資家が1060億ドル、個人投資家が126億ドル分を応募しており、大幅な応募超過となった。
人口3300万人の同国で、申し込みをした個人は490万人に達した。国の発展の象徴ともいえるアラムコへの市民の信頼は絶大で、多くが愛国心から株式を取得に動いたとみられる。
引受証券会社は応募超過の際にアラムコとの契約に基づき「グリーンシュー・オプション」と呼ぶ株式の追加販売の権利を行使することができる。このため、アラムコのIPOによる調達額は最大294億ドルにふくらむ可能性がある。
アラムコは公開株式の売買がいつ始まるかを明らかにしていないが、ロイター通信は11日が取引開始日になる見通しと報じている。
サウジの実力者ムハンマド皇太子は、アラムコの企業価値を「2兆ドル以上」と主張してきた。しかし、市場ではこれを「過大評価」とする見方が広がり、IPOは何度も延期を強いられた。
5%の株式を内外市場で公開する計画は結局、3分の1以下に規模を縮小し、国内で先行実施する変更を余儀なくされた。販売先もサウジの個人や国内ファンドに大きく依存することになった。
海外の投資家のあいだでは、気候変動問題などから石油産業の行方に懐疑的な見方が広がる。ニューヨークやロンドンを想定した海外上場のめどは立っていない。
アラムコのIPOはムハンマド皇太子が旗振り役である脱石油の経済改革の柱だ。アラムコ株の売却資金を活用して、石油に頼らない国づくりを目指す。調達額が想定を大きく下回ったことから、皇太子は今後、改革計画の練り直しを迫られる可能性もある。