バド桃田が見せた 勝負に生きる覚悟
「すごい」「強い」と言われ続けている人はどんなプレーをするのか? いつも興味があるテーマだ。
バドミントンの全日本総合選手権でも世界ランク1位、桃田賢斗選手のプレーを楽しみに見に行った。国際大会とは戦うレベルが違うからこそ、「勝って当然」と期待されるプレッシャーもかかる。本人も「海外の方が気持ちは楽」と言っていた。
初めて桃田選手を見たのは1年と少し前、ジャカルタ・アジア大会だった。1年近いブランクから復帰して世界ランクも上げていた頃、3回戦で負けた試合だった。プレーは「守って、守って、チャンスが来たら打つ」という印象だった。
国内戦というのもあるかもしれないが、今回は攻めていた。決勝も競ったのは最初の数ポイントだけ、すぐに桃田選手ペースに。素人目にも「来年に向けていろいろ試して、より強くなる部分を探しているな」とわかる戦いぶりでの優勝だった。
五輪2度出場の池田信太郎さんいわく、相手が痛恨のミスをしたとき、ここぞとばかりに桃田選手が相手を見つめる視線がド迫力らしい。確かに「あの選手、気持ちが切れた」とわかる瞬間はあった。ただ、気持ちで負けたら勝てないので、「心が折れる」という表現を選手はあまり使わない方がいいとは思う。
落ち込んだり、何かがうまくいかなかったりして、1セット落としても、バドミントンは切り替えて、挽回するチャンスがあるのはうらやましい。水泳は水に入った瞬間、「あれ、かみ合わないな」と思ったら、もう終わり。800や1500メートルだったら立て直せる可能性はあるけれど、100や200メートルではほぼありえない。
試合後、桃田選手と少し話した。彼は「五輪で勝ちたい」という言葉ははっきり口にしない。「恩返ししたい」「応援される選手になりたい」と言う。素直な選手に見える分、覚悟を感じた。
2年前、彼は人間らしい部分をさらけ出し、再出発する経験をした。今は五輪のために多くのことを捨てていて、感情もその一つだと思う。
圧倒的に強い立場にある選手ほど、自分をしっかり持てないと、ライバルに隙を与えてしまう。「何があろうと絶対、自分が勝つ」と心底思えないと、五輪は戦えない。桃田選手はこのまま東京五輪まで突っ走ってほしい。
さて、女子の元世界ランク1位山口茜選手には、残念ながら会場で会えなかった。今、調子を落としているようで、準決勝で負けていた。水泳をやっていたらしく、彼女が小学生の頃、頼まれてサインを書いたことがあるんだけど、覚えているかな?