サウジ、OPECの協調減産延長を提案
アラムコIPO控え減産幅拡大も
【カイロ=飛田雅則】世界最大の石油輸出国サウジアラビアは5、6日の石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどとの会合で、協調減産の強化を提案する。2020年3月末までとした減産期間の延長に加え、減産幅の拡大が焦点だ。国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)を控え原油価格を高めたいサウジが、減産に慎重なロシアを説得できるかに市場の関心が集まる。
主要産油国は5日に減産の状況を確認する監視委員会の開催を予定する。同日にOPECは総会、6日にロシアなど非加盟国を含めた「OPECプラス」の会合をウィーンで開く。
OPECとロシアなどは19年1月から20年3月末まで、産油量を18年秋に比べ日量約120万バレル減らす減産に取り組んでいる。会合ではこの枠組みを20年6月末まで3カ月延長する案を協議する見込みだ。さらにサウジは減産幅の拡大に向けても根回しを進めているもようだ。イラクのガドバン石油相は1日、バグダッドで記者団に「日量40万バレルほどの追加減産を話し合う見通しだ」と明らかにした。
原油相場はさえない。国際指標の北海ブレント原油先物は1バレル61ドル前後と、4月につけた今年の高値より2割安い。米中貿易戦争が原油需要に影を落とすなか、OPECの減産の枠外である米国がシェールオイルを増産しているのが背景だ。産油国関係者は「追加減産しなければ20年前半に大幅な供給過剰になる」とロイター通信に語った。
サウジの警戒感は強い。アラムコのIPOで、売り出し価格を発表するのはOPEC総会と同じ5日だ。原油市場で目先のシェアを落としてでも減産強化をまとめられなければ、原油相場の下落を招き、アラムコの企業価値に響きかねない。調達資金が減った場合、実力者のムハンマド皇太子が主導するサウジの脱・石油改革が失速する恐れもある。
一方、ロシアのノワク・エネルギー相は11月29日に「延長するかどうか決めるのは4月ころまで待った方がよい」と減産強化に慎重な見方を示した。ロシアの石油会社は、減産で価格が上昇すれば、米国のシェールなどが増産しシェアを奪われると懸念している。
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