トランプ氏、ブラジルなど鉄鋼関税対象に 通貨安に不満
【ワシントン=鳳山太成、サンパウロ=外山尚之】トランプ米大統領は2日、ブラジルとアルゼンチンから輸入する鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課すと表明した。両国が自国通貨を切り下げて米国の輸出品が不利を受けていると主張している。保護主義的な政策を打ち出して、業績悪化に苦しむ鉄鋼メーカーや、中国との貿易戦争で打撃を受ける農家にアピールする狙いがありそうだ。
トランプ氏はツイッターで両国が「大幅な通貨切り下げをしており、米農家に好ましくない」との持論を展開した。「多くの国が強い米ドルにつけ込まないよう米連邦準備理事会(FRB)も行動すべきだ」と述べ、FRBにも利下げでドル安に誘導するよう改めて要求した。
トランプ政権は2018年3月から安全保障を理由に、日本や中国など世界各国から輸入する鉄鋼とアルミにそれぞれ25%、10%の追加関税を課している。ブラジルとアルゼンチンは数量制限の受け入れを条件に関税を免除してきたが、トランプ氏は「ただちに」発動すると説明している。
米鉄鋼大手の業績は自動車などの需要が冷え込んで悪化している。中国の報復関税で米国の大豆輸出が落ち込むなか、ブラジルが代わりに対中輸出を伸ばしている。
ブラジルのボルソナロ大統領は2日、記者団に対し「必要であれば、トランプ氏と話す。私は彼と対話のチャンネルを持っている」と発言した。その後、ラジオ局とのインタビューでは「私はこれは報復ではないとみており、私は彼(トランプ氏)にアルミ価格への関税で罰することのないように話す」と述べた。
アルゼンチンのシカ生産・労働相は同日、アルミや製鉄業界の代表者と緊急会合を開き、ロス米商務長官との電話協議を準備していることを明らかにした。
米商務省によると、鉄鋼の輸入相手国のうちブラジルはカナダに次いで2番目に大きく、19年1~9月期の輸入量は前年同期比1割増えた。
南米主要国の通貨は景気悪化や財政不安などで軒並み下がっている。ブラジルのレアルは年初から対ドルで1割安い水準で推移し、11月下旬に最安値を更新した。アルゼンチンの通貨ペソは年初から4割下落した。
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