成長著しいジョン・ラーム メジャー制覇も視界に
ゴルフジャーナリスト ジム・マッケイブ
2017年の最後には世界ランキングが2桁にまで落ち、不振がささやかれたR・マキロイ(英国)だったが、19年8月終わり、プレーオフの最終戦(ツアー選手権)で逆転勝ちを果たすと、16年以来、3季ぶり2度目の年間王者となった。そして、翌月にはシーズン3勝を挙げたことも評価され、米ツアー最優秀選手に選ばれている。
米ツアー最優秀選手を巡る議論
年間王者に関しては、それを決めるプレーオフ(フェデックスカップ)のルール上、異論を挟む余地はない。一方、ツアーメンバーの投票で決まる米ツアー最優秀選手に関しては、選出を巡って、様々な議論があった。
実は、12月1日現在、ゴルフの世界ランキング1位のB・ケプカ(米国)も昨季は全米プロ選手権も含む3勝をマークしており、マキロイとの比較の中で、どの試合で勝ったのか、それぞれの価値をどう捉えるか……、という点で必ずしも意見が一致しなかったのだ。
マキロイは昨季、賞金総額が1250万ドルで、一つの大会としては史上最高だったザ・プレイヤーズ選手権でも逆転勝ちしており、ツアー選手権と合わせれば、確かに格付けの高い大会で2勝している。ただ、ケプカも世界ゴルフ選手権シリーズのフェデックス・セントジュード招待を制しており、メジャー大会での勝利と合わせれば、ケプカの方が上では? という声が少なくなかった。
ただ、個人的にはジョン・ラーム(スペイン)の活躍も記憶に残る。
18年9月終わり、彼はライダーカップ(米国選抜と欧州選抜による対抗戦)の個人戦でタイガー・ウッズ(米国)を下し、欧州選抜の勝利に貢献した。同年12月には、非公式大会ではあるものの、ウッズが主催するヒーロー・ワールド・チャレンジで快勝している。19年春には、米ツアーでは唯一のチーム戦であるチューリッヒ・クラシックにライアン・パーマー(米)とペアを組んで出場すると、3日目を終えて首位に立ち、そのまま逃げ切った。
その後、欧州ツアーのメンバーでもある彼は、7月にアイリッシュ・オープンを17年に続いて制した後、10月には地元スペインで行われたスペイン・オープンでも、2位に5打差をつけ、実力の違いを見せつけている。そして先日、2年ぶりにDPワールドツアー選手権ドバイに勝つと、欧州ツアーの年間王者を決める「レース・トゥ・ドバイ」のタイトルを獲得した。
4カ国で優勝したラーム
ラームは結局、この約1年で、非公式大会を含めれば、米国、アイルランド、スペイン、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイという4カ国で勝利を挙げたことになり、加えて、これまで決して相性がいいとは言えなかった4大大会でも結果を残した。
全米プロ選手権こそ予選落ちしたものの、マスターズ・トーナメントは9位タイ、全米オープンは3位タイ、全英オープンは11位タイ。かつて大舞台に弱いとも揶揄(やゆ)されたが、そのありがたくないイメージも払拭している。
まさに八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍で、課題とされた感情のコントールの面での成長も著しい。彼の存在感は、もはやトッププロのそれと比べて見劣りせず、スペイン勢では、セベ・バレステロス、ホセ・マリア・オラサバル、セルヒオ・ガルシアに続く4人目のメジャー大会制覇を彼が果たしたとしても、なんの不思議はない。
今季はまだ米ツアーに出場していないが、今の勢いを持続できるなら、年明け以降、確実に注目選手の一人になるはずだ