「宮魁道中」で宇都宮ににぎわい 荻原貴則氏
人物ファイル
宇都宮市の中心市街地を着物姿の女性たちが練り歩く「宮魁道中(みやらんどうちゅう)」が30日に開催される。2018年に始まった催しは町ににぎわいを生み、2回目の今年は企業の支援も拡大した。旗を振るのが着物のリサイクル店「きものHAUS」店主の荻原貴則さんだ。着物文化を宇都宮から発信しようと独創的な取り組みを次々に打ち出している。
宮魁道中は京都の花魁(おいらん)姿の50人と宇都宮オリジナルの現代風花魁30人が宇都宮市中心部のアーケード街「オリオン通り」を歩く。京都を拠点とし、ニューヨークなどでも花魁道中を行った実績のある「時代衣裳おかむら」が協力する本格的な花魁道中だ。
開催の背景には1人でも多くの人に着物を着てもらうことで、「20年までに5万人に着物を着せる」という目標がある。
荻原さんは祖父の代から約70年続く呉服おぎはら(同市)の長男として生まれた。大学卒業後にアパレル企業に就職したが「上から指示されるのが好きじゃない」と3年で退職。やりたいことが見つからない中、母から「着物の勉強をしてみれば」と勧められた。
12年、東京・銀座の着物リサイクル店で修業を始める。着物の買い取りや催事への出店で全国を回り、着物を見る目を養った。当初は「3カ月頑張ろう」と思っていたが、気付けば3年半みっちりと鍛えられていた。
15年に宇都宮に戻りきものHAUSで独立。5年で2万人に着物を着せる目標を立て、のち5万人に上方修正した。女性用の着物は税別5千円以下、帯も同様の価格帯とし普及に力を入れる。
ただ客から聞かれたのが「着物は着たいけれど着ていく場所が無い」という声だ。そこで着物姿の人を集めて和太鼓を聞くなど、イベントを定期的に実施している。町全体を巻き込もうと企画したのが宮魁道中だ。
着物を着ることで非日常的な気分を味わえ、それは背筋が伸びるなど所作の変化にも表れるという。着物を販売した人やこれまでのイベント参加者を数えると「3万人くらいには着物を着せたのではないか」と笑う。
(宇都宮支局 松本萌)