「授業・仕事中もゲーム」7% 10~20代、初の調査
厚生労働省は27日、生活に支障が出るほどオンラインゲームなどに没頭する「ゲーム障害」に関する初の実態調査の結果を発表した。10~20代のゲーム利用者のうち、7%が授業中や仕事中にもゲームを続けているなど、一部に依存症状が見られた。休日には12%がゲームを6時間以上していた。厚労省は全世代対象の調査などをさらに進めていく。
ゲーム障害などの専門外来を国内でいち早く立ち上げた国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)が調査を担当。今年1~3月、全国約2300万人の10~20代から無作為に9千人を選び、うち約5千人が回答した。
全体の85%に当たる4438人が過去12カ月間にスマートフォンなどでゲームを利用。このうち2.8%が平日で6時間以上ゲームをしていた。4時間以上6時間未満は6.5%、3時間以上4時間未満は9%だった。休日ではさらに長時間ゲームをしており、6時間以上は12.0%と1割を超えた。
ゲーム利用者を対象に、依存症状の有無について聞いたところ、「本来してはいけない状況(授業中や仕事中など)でよくゲームをする」人は7%、「学業に悪影響が出たり、仕事を危うくしたり失ったりしてもゲームを続けた」も5.7%いた。
身体や家計への影響も大きい。「腰痛、目の痛み、頭痛、関節や筋肉痛など体の問題を引き起こしても続けた」は10.9%、「ゲーム機・ソフト購入や課金などでお金を使いすぎ、重大な問題になっても続けた」も3.1%いた。
いずれも利用時間が長くなるに従って、症状が出る人が増える傾向が見られた。
世界保健機関(WHO)は5月の総会で、ゲーム障害をギャンブル依存症などと同じ精神疾患として位置づけた。(1)ゲームの時間や頻度を自ら制御できない(2)ゲームを最優先する(3)問題が起きているのに続ける――などの状態が12カ月以上続き、社会生活に重大な支障が出る場合に診断される可能性がある。
今回の調査はこうした条件が当てはまる人を抽出する「スクリーニングテスト」ではなく、ゲーム障害の患者規模はなお不明だ。治療のガイドラインも確立していない。久里浜医療センターの樋口進院長は「今回のようなゲーム障害に関する大規模調査は世界でもまだ珍しい。結果を今後テスト手法やガイドラインを策定する際に生かしていきたい」としている。
依存の相談急増、対応急ぐ
「ゲームだけが自分と現実をつなぎ留めてくれると信じていた」。ある30代男性が振り返る。進学先の大学で人間関係がうまくいかず、自宅にひきこもってゲームに没頭。自己嫌悪から自殺未遂や家出を繰り返し、オンラインゲームの課金で家族の金に手を付けるまでになった。4年前に依存症からの回復を支援する施設に入所し、社会復帰を目指している。
依存症からの回復を支援する施設を運営する団体「ワンネスグループ」によると、年約2000件の電話相談のうち、ゲーム関連の相談は2017年の4%から18年は8%に増えた。19年は世界保健機関(WHO)がゲーム障害を精神疾患としたことから急増し25%に達する見通しだ。
依存症問題に取り組むNPO法人「アスク」職員で「ゲーミングの未来を考える会」代表理事の芳山隆一さんはアルコールや違法薬物と違い、ゲームは子供でも日常的に楽しむと指摘し「ゲームは悪と決めつけ、一切触れさせないのは非現実的だ」と強調する。自己肯定感の低さや家庭環境などを巡る「生きづらさ」が背景にあり、家族を含めた支援が重要という。
国内約200のゲーム会社が所属するコンピュータエンターテインメント協会は保護者らが利用時間や課金などを制限できる「ペアレンタルコントロール」機能の普及などに取り組む。協会の18年調査では、同機能の利用は4.8%にとどまる。今後、依存に陥りやすいゲームの利用方法を調査し同機能の利用指針を示すことも検討する。