韓国議長、寄付金で賠償肩代わり提案 元徴用工訴訟
【ソウル=恩地洋介】韓国国会は26日、日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟を巡り、日韓企業と個人の寄付金を賠償金代わりに原告に支払う案を元徴用工関連団体に説明した。文喜相(ムン・ヒサン)議長が提唱し、立法化へ準備を進めている。日本政府内には一定の評価がある一方、原告側は反発している。
元徴用工や遺族でつくる団体の関係者によると、韓国国会の事務局が26日、文議長が検討を進める法案の説明会を開いた。日韓の企業と個人から寄付金を募り、設立する基金を通じて訴訟の原告らに現金を支払う。韓国最高裁が日本企業に命じた賠償を基金が肩代わりする「代位弁済」の形をとる。
文議長は来日中の11月5日に早稲田大学で講演した際、この案を明らかにした。元慰安婦を支援する財団に日本政府が拠出した10億円の残金約6億円を、新たな基金の運営費に投じる構想もある。元慰安婦の支援財団は事実上の解散状態にある。
元徴用工訴訟の解決策を巡っては韓国政府が6月、日韓の企業が自発的に資金を出し合って原告と和解する案を日本政府に示した。日本側は1965年の日韓請求権協定に反するとして即座に受け入れを拒んだ。
今回の文議長の案は日本企業に直接の法的責任を求めない手法を取る点で、日本側に一定の評価がある。超党派でつくる日韓議員連盟の河村建夫幹事長(自民党)は25日付の韓国紙、中央日報のインタビューで同案を巡り「解決策はこれだけだ」として法案の年内成立に期待を示した。他方、韓国政府の関与が必要との指摘もある。
もっとも、原告側は日本企業による賠償と謝罪が必要だとして反発している。原告の支援団体は27日に記者会見を開き文議長案に反対する声明を出す予定だ。