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理想語らぬ政治に危機感 教皇が来日に込めた狙い

編集委員 小林明

(更新)
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ローマ教皇(法王)フランシスコは26日、4日間に及んだ日本滞在を終えて帰路に着いた。38年ぶりとなった教皇の来日は我々の心に何を残したのか。痛感するのは、夢や時代の精神を呼び掛けることの大切さと難しさ。そして分断された世界をつなぎとめ、未来を語る国際的なリーダーシップへの強い渇望だ。

教皇は24日、被爆地の長崎と広島から「核兵器のない世界は実現可能であり、必要である。核兵器は国家の安全保障への脅威から私たちを守ってくれるものではない」と戦争の悲惨さと核兵器使用・保有の恐怖を訴えた。

耳が痛い思いをした政治リーダーは多いだろう。3年半前の2016年5月、現職の米大統領として初めて広島を訪れて平和の祈りをささげたのは、プラハ演説(09年)で「核兵器なき世界」を約束したはずのオバマ前大統領だった。

だが皮肉にも世界の核情勢はかえって深刻さを増している。東アジアでは中国や北朝鮮が核開発や兵器配備を進め、8月には米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約も失効した。小型の"使える核兵器"がテロ組織の手に渡るという新たな恐怖さえ広がっている。

大国といえどもやはり核兵器の均衡による抑止力に頼らざるを得ない。

困難を乗り越えるには多国間の粘り強い交渉や妥協が欠かせない。では誰がそれを言い出すのか。旗振り役だった米国は「自国第一」を叫び、単独行動にひた走る。国連など国際機関による調整も効力が薄い。そんな状況だからこそ、夢や理想を語る教皇の言動に関心が集まっている。

教皇は演説で「平和と安定は団結と協力に支えられた道徳観からしか生まれない。相互不信の流れを打ち砕かなくてはならない。軍備管理の国際的枠組みが崩壊する危険がある」とも指摘した。

これは多国間協議を拒絶する単独行動を強烈に批判した発言である。自国の利益ばかりを優先するなら核廃絶や軍縮の実現はおぼつかない。メッセージには台頭するポピュリズムへの対決姿勢が随所に読み取れる。

教皇の普段の言動からも、世界にはびこるポピュリズムと真正面から格闘する姿が浮かび上がる。

266代目で初の南米(アルゼンチン)出身の教皇となったフランシスコは13年の就任以来「貧者のための教会」を掲げ、様々なメッセージを送り続けてきた。

特に移民受け入れや地球温暖化防止に背を向けるトランプ米大統領に対する批判は手厳しい。メキシコ国境に壁を作るという発言には「懸け橋でなく壁を作ろうとする人は、誰であれキリスト教徒ではない」と強い調子でたしなめた。

資本主義の行き過ぎにも警鐘を鳴らし、弱者に救いの手を差し伸べる。英国の離脱で混乱する欧州連合(EU)首脳には「欧州は家族。意見に違いがあろうと協力しながら成長できる」と結束を呼び掛ける。国際舞台における教皇の存在は決して無視できない。

ローマ教皇庁(バチカン)は、無神論を掲げる共産主義と戦前から一貫して厳しく対峙してきたことで知られる。その象徴的な存在が38年前に来日した教皇ヨハネ・パウロ2世だった。初のポーランド出身の教皇として母国の民主化支援を通じて東欧革命に火を付け、ソ連崩壊、戦後の東西冷戦終結を導いた「陰の立役者」である。

しかし、フランシスコ教皇はその「最大の敵」だった共産主義圏との歴史的な雪解けに足を踏み出した。

15年にキューバと米国の国交回復を仲介したほか、16年にはロシア正教会と和解して1054年以来続くキリスト教会の東西分裂を修復。司教任命権で対立してきた中国政府とも昨年、暫定合意にこぎつけるなど大きな節目になる偉業を次々に成し遂げてきた。

そこには「壁」を作ろうとするポピュリズムに身をもって対峙しようという強い意志がにじむ。

ヨハネ・パウロ2世とフランシスコ――。同じ被爆地で平和と反核を唱えた2人の対比に、世界情勢の構造変化を実感せざるを得ない。

パラダイムシフトはなぜ起きたのか。原因は様々だ。グローバル化とIT(情報技術)の進歩、過剰な競争は社会に格差と分断を生み、安定した政治を支える中間層を疲弊させた。世界の富は欧米からアジアに移転。新興国からの挑戦を受けた先進国にかつての余裕はない。

「イデオロギー対立が終わり、戦後の国際体制の秩序が崩れたことで教皇の闘争相手は共産主義からポピュリズムに変わった」と専門家は見る。

約2000年続いたバチカンの歴史は腐敗と改革の繰り返しだった。フランシスコ教皇は聖職者による児童への性的虐待、バチカン銀行の資金洗浄疑惑など山積する課題への危機感から選出されたとされる。最初から「改革者」としての宿命を背負って登場したわけだ。

そんな活力を取り戻すための改革や自浄作用の知恵も大いに参考になる。混迷の中で岐路に立つ我々はどんな未来を描くべきか。38年ぶりとなったローマ教皇の来日は様々なことを考えさせてくれる。

(編集委員 小林明)

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