LVMH、ティファニー買収で合意 1.7兆円
高級ブランド世界最大手の仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)は25日、米宝飾品大手ティファニーの買収で基本合意したと発表した。買収総額は約162億ドル(約1兆7600億円)。LVMHは伊ブルガリなど高級時計・宝飾ブランドを持つが、同部門の売上高に占める割合は1割弱にとどまる。手ごろな価格帯をそろえるティファニーを傘下に収め補完関係を築く。
LVMHはティファニーの株式を1株あたり135ドルで買い取る。22日の終値を約8%上回る水準となる。規制当局や株主の承認を経て、2020年半ばまでに手続きを完了する予定だ。
LVMHにとって最大規模の買収案件となる。買収計画は10月下旬に明らかになり、欧米メディアによると、LVMHは当初ティファニー1株あたり120ドルで買収を提案したがティファニーは評価額が低いとして拒否。LVMHが価格を引き上げ合意にこぎつけた。
LVMHはリシュモン(スイス)と仏ケリングを含めた「欧州3強」といわれる世界の高級ブランドの最大手だ。主力のルイ・ヴィトンを中心に洋服やバッグ、時計、宝飾品、シャンパンなどのブランドを束ねる。ティファニー買収で売上高は日本円で6兆円を超え、競合の3.5倍以上とさらに差をつける。
LVMHの18年12月期通期の売上高は468億ユーロ(約5兆6100億円)。19年1~9月期は前年同期比16%増の383億ユーロと米中貿易摩擦の逆風の中でも好調な中、宝飾品の強化は課題だった。1~9月期の部門別売上高で「時計・宝飾品」は32億ユーロと最も小さい。伸び率も8%と唯一1桁にとどまり、主力の「服飾・皮革」(22%)に見劣りする。
コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーによると、高級ブランドの中でも宝飾品市場は有望な成長分野で、18年の世界全体の売上高は前年比7%増の180億ユーロだった。LVMHは事業拡大への一手を模索していたとみられる。
若い世代や米国市場の対策という面もある。ティファニーは「オープンハート」という名のネックレスなどで知られ、シルバーを使った10万円以下の宝飾品も充実している。LVMHは高額品を最初に買う消費者向けの「エントリーライン」を増やせる。ティファニーは米国中心にミレニアル世代(1980~00年代生まれ)に親しまれ、補完関係になる。
LVMHの地域別売上高で最大はアジア(31%)で次いで米国(23%)だ。中国の景気減速懸念などでアジアでは不安要素が増す。10月に米テキサス州にルイ・ヴィトンの工房を新設し、落成式にトランプ米大統領を招くなど、米国重視の姿勢を強めている。
ティファニー側もLVMH傘下に入る利点は大きい。高級ブランドが大手グループに集約されるなか、広告費などを捻出して単独で生き残ることは難しくなっていた。
業界関係者によると、「LVMHのティファニー買収は10年以上前から、定期的に噂となっていた」という。LVMHのベルナール・アルノー会長兼最高経営責任者(CEO)は25日の声明で「我々は献身的にティファニーを発展させていく。今後数世紀にわたり成長することを楽しみにしている」と述べた。「巨人」と呼ばれるLVMHは足場を一段と固めることになる。
(ジュネーブ=細川倫太郎、原欣宏)