ソニー、タクシー効率運行を支援 AIで需要など予測
ソニーは人工知能(AI)やセンサーなどの技術を使い、タクシー会社や運転手の支援に乗り出す。AIを使い、需要予測や効率のよい走行システムの案内などのサービスを始める。安全運転の支援ツールの開発に向け、画像センサーなどを搭載した車両の試験走行も始める。タクシーを足がかりに、自動車分野への技術展開を図る狙いもありそうだ。
今月から大和自動車交通へ需要予測システムの提供を始めた。タクシーの走行データや天候情報、周辺のイベント情報などを活用。500メートル四方に区切ったエリアのどこで需要が多いかをヒートマップ方式で視覚的に表示する。ソニーが出資し、配車アプリ「Sライド」を展開する「みんなのタクシー」(東京・台東)を通じて、ほかのタクシー会社にも順次提供する。
みんなのタクシーが保有する空車情報を地図上に表示し、エリアごとの需要に対するタクシーの供給の量を把握できるようにする。コンサートやスポーツイベントが終了した直後などタクシー需要が高まるタイミングを見つけだし、タクシー会社に通知する。
長距離でタクシーを利用する単価の高い乗客の需要も予測できる。乗客が降りた後に運転手の拠点となるエリアに戻る際に、タクシー需要が高まっている場所を経由するルートも提案し、1台当たりの稼働率を高める。ソニーの川西泉執行役員は「運転手の熟練度によらず、効率的な運用をサポートできる」と話し、タクシー会社の収益向上につながるとみる。需要予測システムは東京都の1万台の走行データを活用して開発した。運転手500人が使い勝手などの改善に協力した。
運転手向けの安全運転支援システムの開発にも着手する。車両の内外にソニーの画像センサー8台を搭載し、車の前方に赤外線センサーを対象物に照射して距離を測定する「LiDAR(ライダー)」を設置した試験車両を開発。実際の道路を走行し、道路や障害物など実環境のデータや、ハンドル操作やアクセル・ブレーキの利用状況など運転の記録を収集する。
こうしたビッグデータを解析し、危険予測のデータベースを構築する。ドライバーの安全運転の技術水準を測定したり、より安全な運転ができるようにアドバイスしたりするサービスにつなげる。川西氏は「AIとセンシングで人間の経験や直感に基づいていたデータを収集し、社会インフラの向上につなげる」と話す。ソニーはスマホ向けの「CMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサー」の世界シェアの5割を握る。スマホ向けがメインだが、自動運転の本格化をにらみ車載市場での展開も狙う。
(企業報道部 広井洋一郎)
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