日韓GSOMIA失効回避 韓国、破棄通告を停止
韓国政府は22日、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に関し、23日午前0時の失効を停止する方針を日本側に伝えた。日本が厳格化した輸出管理措置については、世界貿易機関(WTO)への提訴手続きをとめる。日韓間で輸出管理措置の政府間協議を開く。
韓国大統領府は22日午後、文在寅(ムン・ジェイン)大統領も出席し、国家安全保障会議(NSC)の常任委員会を開催し、GSOMIAの扱いを巡る最終的な方針を決めた。韓国政府が破棄通告の効力停止を日本側に通告した。日韓間の安全保障での亀裂が避けられた。
安倍晋三首相は22日、首相官邸で記者団に「北朝鮮の対応のために日米韓の連携協力は極めて重要だ。韓国も戦略的観点から判断した」と述べた。
GSOMIAは軍事上の機密情報を共有する際、第三国への漏洩を防ぐ取り決めだ。日本は韓国と朴槿恵(パク・クネ)前政権時代の2016年11月23日に署名し、1年ごとに自動更新してきた。文政権は8月23日、日本が7月に韓国向けの輸出管理の厳格化に踏み切ったことに反発し、破棄を通告した。
日本は韓国の輸出管理体制に懸念があることなどを理由に、半導体関連材料3品目の管理を厳格化し、その後、戦略物資の輸出手続きを簡素化する優遇対象国から除外した。韓国側は元徴用工問題などに対する経済的な報復だと反発した。優遇対象国から日本を除外し、日本の措置がWTO協定に違反しているとして提訴した。
今回、韓国側はWTOへの提訴手続きを中断すると決めた。今後は日韓の関係当局間で輸出管理のあり方を協議する。茂木敏充外相は22日夜、名古屋市内で記者団に「今後、関係当局間で対話がなされる」との見通しを示した。一方で「GSOMIAと輸出管理の問題は全く別の問題だ」と強調した。
韓国大統領府関係者は同日、記者団に「輸出規制の撤回がなければ協定の延長は取り消せる」と述べた。NSCの金有根(キム・ユグン)事務処長は記者会見で「韓国政府はいつでもGSOMIAの効力を停止させることができるという前提だ」と話した。
GSOMIAが失効すれば、日韓が協定に基づいて融通し合ってきた北朝鮮の弾道ミサイルに関する情報は、両国が同盟関係にある米国を経由して入手することになる。情報収集や共有に時間の遅れが生じ、事後の分析にも支障が出かねない。
日米韓の安保協力のきしみに乗じ、北朝鮮だけでなく中国やロシアも東アジアでの軍事活動を活発化する懸念が指摘される。米国は韓国に協定の継続を働きかけてきた。
米国務省は22日、失効を回避した韓国の決定を「歓迎する」との声明を出した。