米ネット証券シュワブ、TD買収へ 手数料ゼロ引き金
【ニューヨーク=宮本岳則】米国のインターネット証券大手チャールズ・シュワブが米同業のTDアメリトレード・ホールディングを買収する方向で最終調整に入ったことが21日、明らかになった。複数の米メディアが関係者の話として伝えた。業界では10月に株式売買手数料を無料にする動きが広がった。市場で収益悪化懸念がくすぶるなか、早くも大手同士の再編につながった。
米メディアFOXビジネスは、シュワブによるTDアメリの買収額が260億ドル(約2.8兆円)に達する見通しと伝えた。米ネット証券の再編は従来、大手による中小事業者の買収が中心だった。今回は上場するネット証券で時価総額最大のシュワブ(615億ドル)と、同2位のTDアメリによる大手同士の大型統合となる。報道を受けてTDアメリ株の上げ幅は一時、20%を超えた。
経営者を大型再編に突き動かしたのは、収益環境悪化への危機感だ。10月上旬にシュワブが株式やオプション取引料の無料化を発表すると、TDアメリやEトレード・フィナンシャルなど大手が追随し、一気に「手数料ゼロ」の流れができた。収益の柱の一つがなくなるのは痛手だ。TDアメリのスティーブ・ボイル最高財務責任者(CFO)は声明で「純営業収入でおよそ15~16%の減収要因となる」と明らかにしていた。
統合による相乗効果は大きい。米ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズによると、過去の米ネット証券再編では、買収対象会社の営業費用を50%減らせる効果が見られたという。シュワブとTDアメリの統合でも「同程度の効果が見込める」(担当アナリストのクリストファー・ハリス氏)という。シュワブは富裕層向けの資産管理業務で強みを持ち、TDアメリの買収で顧客層の拡大が期待できそうだ。
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