台風の罹災証明書を迅速に 応援の自治体が経験伝授
台風19号で被災した福島県の自治体での罹災(りさい)証明書発行を巡り、県外から応援に入る自治体職員が過去の経験で培ったノウハウを伝授し、滞りがちな証明書の迅速な発行に貢献している。
罹災証明書は、被災者が公的支援を得るための「パスポート」とも言える重要書類だが、発行に時間を要する事例があり、生活再建に早く踏み出したい住民の足かせになっていた。自治体間の支援の好例と言えそうだ。
阿武隈川が氾濫した福島県郡山市には新潟県や同県の市町村が職員を派遣し、証明書発行を支援した。従来、郡山市は申請を受けた家屋を一軒ずつ調べ、被害を判定する計画だった。この方式だと正確性は担保されるが時間がかかる。
実際、自宅1階が浸水した二階堂美枝子さん(68)は「早く修理したいが、証明書の発行前に修理を始めると、お金がもらえないかもしれない」と懸念。2階で暮らす不自由を強いられた。
こうした問題点から、申請前段階でも調査員が浸水地域に大量に入り、地域ごとの被害実態を一気に調査する方式を新潟県の職員が提案。途中から新潟方式を採用したことで、被害認定の効率が大幅にアップした。郡山市の鈴木弘幸税務部長は「当初の計画は大規模災害を想定していなかった。新潟県にはおんぶにだっこだ」と感謝した。
新潟県は2004年の中越地震や07年の中越沖地震で自治体間の調整が不十分だったことを教訓に、罹災証明書の発行を迅速化するためのガイドラインを作った。
昨年の西日本豪雨で新潟県の支援を受けた岡山県倉敷市の担当者も「倉敷にはノウハウがなかったので、とても助かった」と振り返った。
〔共同〕