白雪姫からチャップリンまで多彩に 12月の歌舞伎公演
12月の東京に歌舞伎の新作が3本そろう。白雪姫にチャップリン、宮崎駿と、どれも歌舞伎とは遠いように感じる世界を原作とするが、それだけに、歌舞伎とは何かを考える機会になる取り組みでもある。
まずは歌舞伎座(東京・銀座)。夜の部の坂東玉三郎主演「本朝白雪姫譚話」は、グリム童話「白雪姫」の舞台を日本の天正期に移した作品だ。玉三郎は「俳優祭」というイベントで同作を演じたことがあり「この物語は歌舞伎的だ」と感じたという。現代の感覚では非合理的な展開が多いからだ。今回は、自身が演じる白雪姫が若手にいじめられる構図を作って笑いの要素にし、長唄や箏曲を入れて「音楽的な舞台にしたい」と玉三郎。
国立劇場(東京・半蔵門)は2本立ての1本としてチャップリンの映画「街の灯」をもとにした「蝙蝠(こうもり)の安さん」を上演する。主演は松本幸四郎。米国で映画が公開された1931年に、早くも木村錦花の脚色で歌舞伎座で舞台化された。歌舞伎の「蝙蝠の安五郎」を映画の主人公に見立てて江戸の物語にしている。これを演じた守田勘弥の写真を見て、幸四郎は30年近く「いつかやりたい」と念願していたという。衣装は、以前の舞台よりもチャップリンに似せる。
さらに新橋演舞場(東京・銀座)では「風の谷のナウシカ」。宮崎駿のアニメ映画ではなく、より長い物語である漫画を原作にしており、尾上菊之助がナウシカを演じる。神話の登場人物のような強力なヒロイン像は歌舞伎と通じるが、荒廃した地球を歌舞伎でどう視覚化するかなどが注目されている。
チャップリンと白雪姫は、過去に上演されたという意味で純粋な新作ではないが、脚本や演出は新しくする。歌舞伎座は2~26日、国立劇場は4~26日。新橋演舞場は6~25日。
(瀬崎久見子)