米富豪、民主ウォーレン氏台頭に危機感 一斉に反論
【ニューヨーク=宮本岳則】米大統領選の民主党予備選有力候補、ウォーレン上院議員の主張を巡り、米経営者や富豪たちが一斉に反論を始めた。米金融大手ゴールドマン・サックス前最高経営責任者(CEO)のロイド・ブランクファイン氏は14日、一方的な金持ち批判に懸念を表明した。ウォーレン氏が増税や大企業の分割など急進的な政策で支持を広げることに危機感を強めており、積極的な発言につながっている。
ウォーレン氏陣営のテレビ広告が物議を醸している。国民皆保険の財源とする富裕層増税の導入を訴える内容で、ブランクファイン氏のほか、著名投資家レオン・クーパーマン氏など富豪を非難する映像が流れる。ブランクファイン氏は14日、ツイッター上で金持ち批判は米国社会にとって良くないと発言。「彼女のDNAには(意見の違いを認めず敵を攻撃する)『部族主義』が埋め込まれている」と批判した。
米金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOも11月上旬、米経済テレビ局CNBCのインタビューに応じ、ウォーレン氏の発言について「成功者を中傷している」と批判した。ハイテク企業の分割など規制強化に積極的な姿勢にも懸念を表明。「米国は自由な企業活動の上に成り立っている」と述べた上で、過度な政府の介入がひどい失敗を招いてきたと警鐘を鳴らした。
米経営者らが「反撃」を始めたのは、民主党指名争いにおける中道派候補の苦戦がある。本命と目されていた中道派のバイデン前副大統領は支持率が伸び悩み、10月中旬にはウォーレン氏に首位の座を譲った。マイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長も出馬準備を始めたが、出遅れは否めない。ウォーレン氏が民主党候補に選ばれれば、先行き不透明感から株価が下落したり、企業活動が停滞したりする恐れが指摘されている。
米経営者らの反論が、中道派候補への「援護射撃」になるかは未知数だ。米実業家で富豪のマーク・キューバン氏は米FOXテレビに出演し、ウォーレン氏を「トランプ的」と指摘した。トランプ米大統領は前回選挙で首都ワシントンの既存体制やエリート層を「敵」として徹底的に批判し、中・低所得者の支持を集めた。ウォーレン氏も富裕層への攻撃で所得格差に不満を持つ層をひき付ける。富豪らの反論で対立構図がより鮮明になれば、ウォーレン氏が勢いづく可能性もある。