英語、出題方針維持に賛否 21年共通テスト
「授業内容充実できる」「2次試験再考が必要に」
大学入試センターは15日、2021年1月が初回となる大学入学共通テストの英語で、「読む・聞く」の2技能を測る出題とする方針を決めた。現行のセンター試験では「書く・話す」力を間接的に試す問題があったが、廃止される。「授業で他の内容を充実させられる」と前向きに捉える高校がある一方、「2次試験の内容を見直す必要があるかもしれない」と戸惑う大学もある。
共通テストの英語から無くなるのは、複数の単語からアクセントや発音がほかと違うものを選ぶ問題や、単語を並べ替えて文章を作る「語句整序」の問題だ。
同センターは6月、4技能を問える英語民間試験の活用や、アクセント問題などが実用的でなく学習指導要領の趣旨に合わないことを理由に、共通テストで出題しない方針を公表していた。
しかし11月に入り、公平性に課題があるなどとして文部科学省は民間試験の活用見送りを決定。同センターは再検討したが、問題作成を始めており変更は困難だった。
文科省で15日記者会見したセンターの担当者は、共通テストはセンター試験と同じく50万人以上が受験し、短期間での採点が求められると説明。「書く・話す」力が問えないのは「仕方がない」と述べた。今後の問題作成方針を巡っても、個人的な見解とした上で「大きく変更することにはならないのでは」との見通しを示した。
配点の方針も変えない。センター試験は「筆記」が200点、「リスニング」が50点だが、バランスを重視し、共通テストでは「リーディング(筆記)」100点、「リスニング」100点とする。
活用力を重視する都立高校の英語教諭は「発音やアクセントの問題が解けても話すことはできず、ナンセンスだった」と指摘。その上で「(語句整序などが)出題されなくなることで、コミュニケーションに力点を置いた学習に時間を充てられるようになる」と歓迎する。
一方、駿台教育研究所の石原賢一進学情報事業部長は「長文を読む問題が多くなり、学力によっては解答時間が足りなくなる。得点の高い層と低い層で二極化しやすくなるのでは」と懸念する。
大学にとっては2次試験の出題方針の再考が必要になるとの見方もある。民間試験の導入を前提に2次試験は「読む・書く」に絞る方針だった国立大の幹部は「試験で問うかどうかを改めて考えなくてはならない。アクセント問題などを単純に追加すればよいという話ではなく、問題全体を作り直す必要があるかもしれない」と話す。
文科省は今後1年かけて英語の試験のあり方について検討し、24年度に新たな試験を導入するとしている。高校などからは大学入試センターが4技能を問う試験を作り、実施することを望む声もある。ただ同センターの担当者は会見で「限られた期間で採点できるか、採点できる人がいるかで非常に大きな課題が出てくる」と否定的な見方を示した。