「オープンな議論を」「皇室に親しみ」 大嘗祭で識者
天皇陛下の即位に伴う皇室行事「大嘗祭(だいじょうさい)」。意義などについて有識者に聞いた。
久礼旦雄・京都産業大准教授(日本法制史)の話
大嘗祭はもともと民の協力を得て新穀の献上を受けるもので、国の統合という意味合いがあり、日本の稲作農耕文化に根ざした秋祭りが源流になっている。
前回は天皇が大嘗宮内で呪術的な秘儀を行うとの説が注目され、政教分離の観点から批判が相次いだが、当時の政府は積極的な議論を避けた。上皇さまが退位された今回、もう少し議論があってもよかったかもしれない。
冨永望・京大大学文書館助教(日本近現代史)の話
前回の大嘗祭との違いは、天皇制への反対勢力が決定的に力を失ったことだ。上皇さまは平成を通じて国民に寄り添い、象徴としての活動を続けられた。このことが高い支持を集めたのは間違いない。
ただ、だからといって前例踏襲でよいわけではない。即位関連儀式には近代以降の新設も多い。象徴天皇制が国民の総意に基づく以上、オープンな議論で合意形成することが重要だ。
石田あゆう・桃山学院大教授(メディア文化論)の話
儀式本来の意義とは別に、数十年に1度の「レア感」から関心を持った人も多いはず。皇后さまが涙を拭われたパレードなどは、安定して視聴できる「優良コンテンツ」だった。
平成の30年間にメディア環境は激変した。ネットを含め一連の行事を「ライブ感覚」で目撃した人たちは、皇室を身近に感じただろう。歴史の一部に参画したという実感が語り継がれていくのではないか。