「前哨戦」の経験を糧に…平野早矢香(卓球)
10日まで東京体育館で行われた卓球のワールドカップ団体戦で日本は女子が準優勝、男子は3位だった。いずれも優勝した中国に0-3で敗れたが、女子は伊藤美誠(スターツ)が中国トップ選手にゲームの主導権を握り、男子の張本智和(木下グループ)が団体戦では一番のパフォーマンスを見せたことは収穫だ。
女子の決勝で、伊藤は中国の次世代エース孫穎莎から最初の2ゲームを連取した。10月に2度対戦した際に苦しめられたサーブに前半はきっちり対応。この後2ゲームを取り返されたものの、流れは悪くなかった。
ただ、孫の終盤のプレーは他の中国のトップ選手とひと味違った。負けられない重圧から、劣勢ならミスを減らそうと粘って返球するのが常識なのに、後がない場面でもバックハンドを思い切り振ってきた。結果論になるが、相手が自信を持つバックハンドを伊藤は何度も受けていたので、サーブの回転やコース取りの工夫が必要だったかもしれない。
五輪の団体戦でも第1試合で行われるダブルスは、各チームとも強化していた。日本は石川佳純(全農)と平野美宇(日本生命)のペアが全試合に出場。石川のフォアハンドや平野の台上プレーには練習の成果が見て取れた。ただ、中国や韓国との対戦では、想像よりも1本多く返ってくる感覚があったと思う。五輪の代表選考が大詰めで遠征続きの現状を考えればまだ伸びしろはある。
男子は水谷隼(木下グループ)の故障でダブルスのペアを急きょ組み直したので苦しかった。その中で張本が普段のワールドツアーなどで勢いに乗った時と同様のプレーを見せたのは大きい。過去の団体戦では迷いが出ると足が止まる場面もあったが、大黒柱の水谷が不在で「自分が絶対に取る」と切り替えられたのだろう。強豪ドイツとの準々決勝で思い切り良く戦って2勝したことは自信になったと思う。
男子は中国を追う2番手争いが混戦で、韓国やドイツなど強敵ぞろいだ。女子も他国がこれまで以上に向かってくるに違いない。周到な準備が必要になる。東京体育館は全日本選手権も何度も行われてきたが、今大会の大声援は国際大会ならではだった。応援は多くの場面でプラスになるが、緊張感につながることもある。選手たちが「これがもし五輪だったら」と本番を想像しながら戦えたことは、良い経験になったと思う。
(ロンドン五輪団体銀メダリスト)