米中「部分合意は間近」 トランプ氏、決裂なら関税上げ
【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領は12日の講演で、中国との貿易交渉について「第1段階の合意は署名が間近だ」と強調した。両国は11月中に首脳会談を開き、農業や金融分野などに絞って部分合意する方向で協議している。トランプ氏は「合意できなければ関税を大幅に引き上げることになる」とも述べ、中国側に引き続き圧力をかけた。
トランプ氏はニューヨーク市内で企業経営者らの会合に参加した。米中の貿易交渉に関しては「中国は取引したがっている」と語り、早期合意の可能性を引き続き指摘した。米政権は12月中旬に追加関税第4弾の発動を予定するが、中国との部分合意が実現すれば先送りする方向だ。
ただ、トランプ氏は「米労働者や米企業の利点がなければ合意しない。合意しなければ関税を大幅に引き上げることになる」と改めて指摘し、中国に一段の譲歩を求めた。習近平(シー・ジンピン)国家主席との首脳会談の時期や場所などに言及するのも避けた。
会合参加者からは企業投資の停滞など貿易戦争を不安視する声が上がった。トランプ氏が「貿易戦争に不透明感などはない。連邦政府によって農家を(補助金などで)支援し続けている」などと防戦に追われる場面もあった。同氏は「2016年の選挙前、中国が米国の知的財産権を盗んできたにもかかわらず、米国の政治家は中国に何もしてこなかった」と、オバマ前政権を強く批判してみせた。
12日の演題は「貿易と経済について」で、1年後に迫った次期大統領選を前に経済政策の実績を披露するねらいもあった。トランプ氏は「16年の選挙以降、ダウ工業株30種平均は50%以上も上昇した」と強調した。実体経済面でも「失業率は50年ぶりの低水準にまで下がり、この3年間で700万人もの雇用を創出した」と指摘した。
一方で、民主党予備選ではエリザベス・ウォーレン上院議員らが大幅な増税構想を掲げており、企業経営者らには不安がある。トランプ氏は「自分が大統領でいる限りは米国を社会主義には決してしない」と主張。大統領就任後に手掛けたエネルギー分野の規制緩和なども強調し、会場のウォール街の関係者らに支持を求めた。
ドナルド・トランプ元アメリカ大統領に関する最新ニュースを紹介します。11月の米大統領選挙で共和党の候補者として、バイデン大統領と再び対決します。「もしトラ」の世界はどうなるのか、など解説します。