工作機械受注、見えぬ回復 13カ月連続マイナス
景気の先行指標である工作機械受注が一段と厳しさを増している。日本工作機械工業会(日工会)が12日に発表した10月の受注額(速報値)は、前年同月比37.4%減の874億円となり13カ月連続で前年を下回った。業界で好不況の目安とされる1千億円の大台も3カ月連続で割り込んだ。米中貿易摩擦が続くなか、製造業は投資に慎重な姿勢を変えていない。
10月の受注額は、6年ぶりに900億円を割り込んだ8月の水準(884億円)も下回り、前年からの減少幅も過去1年で2番目に大きかった。内需は42%減の334億円で11カ月連続のマイナス、外需は34.1%減の540億円で13カ月連続のマイナスだった。米中摩擦の影響で18年秋から減速してきた電機や精密関連に加え、自動車や一般機械向けの動きも鈍い。
三菱重工工作機械では、主力の自動車向けで変速機の大型受注があった前年の反動減があるほか、中小企業中心に大型機の商談の遅れが目立つという。牧野フライス製作所も半導体製造装置などの大口案件がなかった。「スマートフォン関係の一部では底を打った動きもある」(ツガミ)との見方もあるが、「米中摩擦によるマインド面の影響が大きく、(顧客の間に)全般に様子見が広がっている」(オークマ)との声が大勢を占める。
中国などで、20年以降の受注のけん引役と期待されていた次世代通信規格「5G」関連の投資の立ち上がりも遅れている。「受注の回復は来年4月以降で、回復のスピードも各社で差が出そう」(ある工作機械メーカー幹部)という。半導体の一部では5G関連の需要が見られるが、工作機械の動きは鈍いようだ。
19年1~10月の受注総額の累計は前年同期比31.7%減の1兆581億円だった。内需は33.2%減の4245億円、外需は30.6%減の6335億円だった。日工会は今年9月、19年通年の受注総額の見通しを当初の1兆6000億円から1兆2500億円に引き下げた。18年に比べて3割低い水準で、リーマン・ショック以来の大幅な落ち込みとなっている。