大混戦のJ1 優勝争い・残留争いの行方を占う
サッカージャーナリスト 大住良之
Jリーグ1部(J1)は11月10日までに31節を消化、残りわずか3節となったが、優勝争いも残留争いも大混戦。予断を許さない状況にある。
優勝争いでは、第31節に首位鹿島アントラーズが4位川崎フロンターレに0-2で敗れて首位を明け渡し、ジュビロ磐田を1-0で下したFC東京が4節ぶりに首位に立った。だがFC東京も2位の横浜F・マリノスとはわずか勝ち点で1差。3位に落ちた鹿島との差も3しかなく、この時点になってなお予想は非常に困難だ。
一方の残留争いでは、最下位(18位)の磐田の16位以下が決定。磐田は残り3節で全勝しても、自動降格(17、18位)あるいは2年連続の「J1参入プレーオフ」への出場となる。
だが残り2つの「降格ゾーン」から逃れる争いは大混戦の様相だ。このリーグ終盤にきて、9位のガンバ大阪から17位の松本山雅FCまで、実にJ1の半数に当たる9クラブが「残留確定ゾーン」まで逃げ込めていないのだ。得失点差からみれば、勝ち点38で並ぶ9位G大阪、10位ヴィッセル神戸、11位ベガルタ仙台の3チームが16位以下になる可能性は極めて低い。しかし数字上はまだ「危険ゾーン」にあるといえる。
現在16位、「プレーオフ圏」で苦しむ湘南ベルマーレは、8月中旬に曺貴裁前監督がパワハラ問題でチームを離れて以来、9戦して2分け7敗、勝ち点を2しか積み上げられず、この間に順位を11位から16位に落とした。残り3節は、首位FC東京とのアウェーゲーム、6位サンフレッチェ広島とのホームゲーム、そして17位松本とのアウェーゲーム。このところ6連敗、得点はわずか2。相手ゴールをこじ開けることが「生き残り」へのカギだ。
さて、優勝争いは、数字上は、4位の川崎(首位FC東京との5差の勝ち点57)にも可能性はある。しかし川崎はアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝に進出した浦和レッズとの第32節の試合をすでに消化しており、残りは2試合。勝ち点は最多で63にしかならず、「逆転で3連覇」の可能性は極めて小さい。
鹿島は第31節に川崎に0-2で屈したが、試合は攻撃力を誇る川崎に対し優勢だった。戦列を離れていたMFレオシルバ、FWセルジーニョらが復帰して調子は上向いており、残り3戦(広島、神戸、名古屋)を全勝して勝ち点を68まで伸ばす可能性は十分ある。
■FC東京、最後に横浜Mと直接対決
首位の座を取り戻したFC東京は、ラグビー・ワールドカップによる「アウェー8連戦」で苦しんだ。ウイークデーの試合こそなかったが、毎節必ず遠征があるという日程は、次節に向けての修正や調整のタイミングを狂わせ、一時は2位に勝ち点7もの大差をつけて独走していた首位の座も失った。しかし「8連戦」の最後の3試合を神戸に3-1、大分に2-0、磐田に1-0と3連勝し、軌道を修正した。
残るは、これまで15戦して12勝3敗と圧倒的な成績を残しているホームが舞台の湘南戦と浦和戦、そして最終節に2位横浜Mと直接対決するアウェーゲーム。31試合で24失点という堅固な守備をベースに、日本代表に定着したFW永井謙佑とFWディエゴオリベイラの強力2トップを生かすバランスのとれたサッカーで連勝し、優位な状態で横浜Mとの決戦に臨みたいところだ。
現在の優勝争いで最も興味深い存在が、横浜Mだ。第31節では、攻撃力のあるコンサドーレ札幌をホームに迎え、圧倒的なスピードの攻撃的サッカーを展開して4-2で快勝した。リードしても休むことなくさらに相手ゴールを襲い続けたアグレッシブな姿勢は、堅固な守備をベースにした首位FC東京とは好対照だ。
前半4分までに2-0とリード。1点を返されたが、前半は3-1で終えた。後半もチャンスをつくり続けてPKで4-1としても、早いタイミングで前線に出し、そこにMFだけでなくDFもサポートし、オーバーラップして攻め続けようというサッカーはエキサイティングそのものといえる。
■横浜M、現在J1最多の60得点
オーストラリアを初のアジアカップ優勝(2015年)に導いた後、17年にワールドカップ予選で大陸間プレーオフ(対ホンジュラス)を制し出場権獲得に導いた後に代表監督を辞任し、18年から横浜Mで指揮をとっているアンジェ・ポステコグルー監督は、就任当初からエキサイティングな攻撃的サッカーを標榜して指導してきた。ビルドアップに参加するGK朴一圭(パク・イルギュ)を含めた圧倒的なパス回しと、攻撃が始まったらどんどん前線に人を増やしていく動きで、J1最多の60得点を記録している。
ブラジル人のマルコスジュニオール、エリキ、マテウスと、身長161センチのスピードスター仲川輝人が組む最前線は、高い個の能力をコンビネーションプレーに結びつける。なかでも仲川のドリブルとシュートの切れ味は抜群だ。
横浜Mの残り試合は、松本(アウェー)、川崎(アウェー)、そして最終節のFC東京との直接対決(ホーム)。川崎は強敵だが、守備固め必至の松本戦が、最終節でFC東京との「優勝決定戦」に臨めるかどうかの、より大きなカギになりそうだ。
Jリーグの最終3節は、「代表ウイーク」後、11月23、30日、そして12月7日の各土曜日に、基本的に午後2時キックオフで行われる。