優れもののゴルフGPSナビ 中国製品、ここにも
ゴルフジャーナリスト 地平達郎
ゴルフのプレースタイルが変化してきている。
かつてはキャディーが付いて歩いてのラウンドが普通だった。今もその伝統を守っているコースもあるが、近年の猛暑時は来場者が激減する。重労働のキャディー確保も大問題で、プレー費も高くなるから、若い人たちがゴルフをやろうとしない……。各種の調査によると、1990年代には1500万人いたとされるゴルフ人口が、2016年には500万人台まで激減したそうだ。
しかし、このあたりで底を打ち、ここ1、2年、ゴルフ場から「お客さんが戻ってきた」という声が聞かれるようになった。東京オリンピック効果か、「若い人たちが増えてきた」というのだ。
それらのコースの特徴として、歩きではなく自走ゴルフカートでのプレーを導入していることがあげられる。初期費用はある程度かかるが、キャディーの負担は大幅に減るし、キャディーなしのセルフプレーも急増。さらにはフェアウエー乗り入れOKのところも増えてきた。
何のことはない、長い時間をかけて、やっと米国のプレースタイルが浸透してきたということである。ドレスコードがゆるくなってきたことも大きな変化だが、これだけで満足しないのが日本人らしいところで、さらに進化を続けている。
その象徴が、近ごろ急増しているゴルフカートに付けられたGPS(全地球測位システム)ナビゲーションシステムである。人工衛星を使った位置確認情報とコンピューターを使い、プレーヤーにいろんなデータを提供してくれる。
ティーイングエリアに近づけば、そのホールの特徴やコース攻略のアドバイスが表示される。2打目以降は、カートをボールの近くに持っていけばピンまでの距離を数字と音声で教えてくれる。
日によってピンの位置は変わるが、それも大丈夫。GPSで両方の位置を認識し、1ヤード単位で出てくる。そこまで正確に打てるかどうかは別にして、「キャディーさん、残り何ヤード?」と聞く必要はなく、グリーンの傾斜も表示されるから、あとは腕しだい。
さらにスコア集計の機能も付いている。そのホールが終わったところでスコアを入力すればコンピューターに記憶され、合計スコアも出る。さらにさらに、ラウンド中に参加者全員のグロススコアも見ることができる。中には「〇〇さんが○番ホールでバーディー」などの情報が出る機種もあり、テレビのトーナメント中継のように楽しめる。
スタート前にマスター室にダブルぺリアや固定などのハンディキャップ方式を伝えておけば、全員がホールアウトした直後にスコア集計・プリントアウトされるから、成績発表まで長い時間待つこともない。
すべての操作はタッチパネルでできるので、スマートフォンやタブレットを使い慣れた若者にはピッタリ。ゴルフもゲーム感覚になってきたようで、ゴルフのハードルもグンと低くなった。
ただ、機種によっては気になるところもある。音声で知らせてくれる言葉(単語)のアクセントが普通の日本語と微妙に違うのだ。気になってナビの端末を見ると、中国メーカーの名前が書いてあった。
先ごろノーベル化学賞の受賞が決まった吉野彰さんは、ゴルフが趣味だそうだ。その吉野さんが「日本は川上の産業は健闘しているのに、川下の力がない」と言っていたが、いかにも日本らしい優れもののGPSナビが外国製――では心もとない。