英語民間試験、経緯なお不透明 非公開で議論進む
2020年度開始の大学入学共通テストでの活用見送りが決まった英語民間試験で、非公開で行われた文部科学省の有識者会議でも公平性確保などの課題が指摘されながら同省が活用方針を決めた過程が関係者の証言で明らかになってきた。政治主導で提唱された民間試験活用に文科官僚らはなぜ突き進んだのか。なお不透明な経緯の検証が求められている。
「全員がもろ手を挙げて賛成ではなかったが、最後は事務方に一任した。結論が『民間試験の活用』に変わった理由は自分にも分からない」。同省が設けた有識者会議「『大学入学希望者学力評価テスト(仮称)』検討・準備グループ」のメンバーの1人が明かす。
民間試験や共通テストを巡り、同省は複数の有識者会議を設けた。中でも経緯解明の鍵を握るとみられるのが16年4月に発足した同グループだ。
検討の土台としたのは別の有識者会議が直前にまとめ、「民間試験の知見の積極的な活用を検討する」とした最終報告。14年12月の中央教育審議会の答申と同様に、民間からノウハウの提供を受けて大学入試センターが「読む・聞く・書く・話す」の英語4技能を問う試験を開発することも視野に入っていたとされる。
共通テストの具体的な制度づくりを担う同グループの議論は途中まで非公開で進んだ。参加者によると、複数の委員から、民間試験を活用する上での課題として居住地域や家庭の経済状況によって受験機会に格差が出るといった懸念が出されていたという。
しかし文科省は16年8月、「民間試験を積極的に活用する必要がある」とする同グループの検討状況を公表。17年7月には共通テストの実施方針として活用を正式決定した。
同省はこの間の経緯の詳細を明らかにしていないが、ある幹部は「民間試験の活用は政治主導の流れの中で進んだ。政治が決めたことをこなすのに精いっぱいになっていた」と打ち明ける。
大学入試での民間試験の活用は13年、当時の下村博文文科相らが参加する政府の教育再生実行会議などの提言が起点になり、検討が進んだ。同省幹部は「きちんと実行できるのかという読みが甘いまま、政策の実現だけを優先して進めてしまった」と話す。
大学側の懸念などを受けて18年12月に設置した作業部会もほぼ非公開とし、高校などの慎重論を押し切って実施に突き進んだ。
同省は今後、非公開だった検討・準備グループなどの会議議事録を公開する考え。24年度実施を目指す新たな英語入試に向けた検討会議でも、民間試験の活用が決まった経緯を検証するとしている。非公開の場で民間試験の活用がどのように話し合われ、議論を引き取った文科省内でどのように検討が進められたのかが焦点になる。
同省が設置した有識者会議には、複数の試験団体の関係者がメンバーとなる例があったほか、ベネッセコーポレーションの英語試験「GTEC」を巡り、関係団体の理事長を19年10月まで元文部事務次官が務めていたことも判明。国会で野党などから同省に詳細な説明を求める声が上がっている。