埼玉県内金融2行の4~9月「本業」収益、苦戦続く
埼玉県内に本店を置く埼玉りそな銀行と武蔵野銀行は8日、2019年4~9月期決算を発表した。本業のもうけを示す単体の実質業務純益は両行とも前年同期を下回った。注力する手数料収入も投資信託などの販売が伸び悩み、預貸金業務のマイナス分を補うには至らなかった。低金利が長期化するなか、両行が取り組む収益構造改革は一進一退が続いている。
埼玉りそな銀の実質業務純益は前年同期比8%減の233億円。貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金利益が10%減った影響が出た。曙ブレーキ工業の私的整理に伴う損失処理などを受けて与信関係費用が21億円発生し、税引き利益は2%減の155億円。
武蔵野銀も有価証券利息配当金の減少が響き、実質業務純益は13%減の56億円だった。一方、不良債権処理が大幅に減り、連結純利益は6%増の53億円となった。同行は18年4~12月期に曙ブレーキ工業への貸出金70億円を全額引き当てており、私的整理の成立で多額の戻入益が発生したためだ。
与信費用を巡り最終利益では両行の明暗が分かれたが、本業を取り巻く厳しい状況は共通している。貸出金利回りは「底打ちの兆しが見えてきた」(武蔵野銀の長堀和正頭取)ものの、依然低空飛行が続く。9月末時点の貸出金残高は両行とも積み増したが、ボリュームに頼る収益モデルには限界がある。
こうした危機感から両行は金利に左右されにくい収益構造への転換を目指し、手数料収入の拡大に力を入れている。
埼玉りそな銀は住宅ローンが堅調だったほか、中長期に手数料収入が見込める「ファンドラップ」や相続関連も伸びた。池田一義社長は「改革は道半ばだが、成果は出てきている」と強調する。武蔵野銀も業務提携する千葉銀行と協力して東京都内の取引先を開拓するなど法人向けが好調で、県内の取引先にもM&A(合併・買収)の需要が増えているという。
一方、投資信託販売など個人向けは両行とも伸び悩み、手数料収入を示す役務取引等利益は武蔵野銀が2%増、埼玉りそな銀はほぼ前年並みの135億円だった。低金利が長引くなかで収益を安定させるには、今後「マーケットに左右されない手数料ビジネス」(長堀頭取)を早急に確立できるかがカギになる。
20年3月期通期の業績見通しは、埼玉りそな銀が税引き利益を275億円とし、従来予想から25億円引き下げた。一方、武蔵野銀は与信費用の減少を勘案し、連結純利益を従来予想より10億円多い88億円とした。