世界景気底入れ「見通せず」 中部企業トップが懸念の声
2019年4~9月期決算は製造業の減速が鮮明になった。自動車の販売不振や設備投資の先送り、円高などの逆風が吹き付ける。米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の影響が読み切れない中、景気や業績の底入れ時期について、中部企業のトップからは「見通せない」との声が多く聞かれた。
トヨタ自動車の主要グループ8社のうち、デンソーやアイシン精機など5社が2020年3月期の連結純利益見通しを下方修正した。中国事業が不振だったアイシンの伊勢清貴社長は「(中国は)少し経済指標がよくなっているが、安易な予想はしないほうがいい」と慎重な姿勢を強調した。
ジェイテクトも中国関係で売り上げの減少が響いた。安形哲夫社長は「海外は思ったほど改善しない」としたうえで「米中関係は、20年の選挙(米大統領選)まで誰も分からない」と困惑気味だった。
英国のEU離脱についてデンソーの山中康司副社長は「非常に不透明でしっかり注視したい」と述べ、豊田自動織機の大西朗社長は「欧米はブレグジットもあり下期は慎重な見方が強まっている」と話した。
景気の先行指標とされる工作機械の受注はさえない。世界的に設備投資を先送りする動きが広がっているためだ。受注の先行きについて、オークマの家城淳社長は「早ければ第3四半期(10~12月期)にも底入れするかもしれないが、米中の交渉次第では来期以降になる」とみる。
DMG森精機の森雅彦社長は「(受注の)下降傾向はあと半年ほど続き、その後は回復が始まる」と指摘。反転する要因として「00年以前に造られた工作機械の更新需要が始まる」との見方を示した。
半導体関連では、底入れが見えてきたという声が多かった。自動車の電動化や次世代通信規格「5G」などの需要がけん引するという。日本ガイシの大島卓社長は「半導体メーカーに増産の動きもあり20年中には回復する」とみる。ノリタケカンパニーリミテドの加藤博社長は「今期の動向は読めないが、来期には5Gなどの需要がはっきりしてくる」と期待を寄せた。