ヘッジファンドの日本株試し買い、次の一手は
本欄10月28日づけ「米連邦公開市場委員会(FOMC)直前、現地でヘッジファンドと対話」で、米ニューヨークのヘッジファンドの「日本株検討会」に招かれ、日本株に対する本気度を感じたことを記した。人的ネットワーク内の仲間意識ゆえの本音が飛び交い、セル・サイド(業者側)ではない立場からの中立的見解を求められた。
その後、ほどなくヘッジファンドの日本株買いが始まった。当初は試し買い程度であったが、その後、世界株高・リスクオンの波に乗り、日本株への運用配分を増やした。ただし、クリスマス休暇までの期限付き買い傾向が目立つ。今回の買いは「第一ラウンド」と語るので、2020年には再開の意図が感じられる。
ヘッジファンドの日本株買いは波状攻撃が予想され、まだ始まったばかり、とも言えよう。そもそも、20年にはアンダーウエートの日本株運用配分をニュートラルにシフトすることを念頭に、10月に現地で筆者の中立的意見を求めてきたのだ。
その後、ダウ工業株30種平均株価は史上最高値を更新。高値警戒感が強まり、国際分散投資の必要性が意識されている。まずは欧州株、次に、日本株などが受け皿として挙がる。政治に強度の不安定要因をかかえる欧州株に比し、日本の政権安定性が鮮明だ。米中貿易協議進展ムードのなかで、日中接近も、追い風となっている。
個別案件では、なんといっても、ソフトバンクグループとウィワークが話題だ。かなり厳しい意見が多い。ただし、この件がキッカケになり日本株の動きが彼らの「レーダースクリーン」の追跡対象になるという想定外の効果も出ている。これまでは選択肢として日本株の名前さえ挙がらなかったことを思えば、この程度でも前進と評価できよう。NYで世界的株高が語られるとき、米国株、欧州株、新興国株、中国株と続き、最後に「あの日本株でさえ」上昇という表現になる。「Even Japan」。
それが一度や二度ではない。それゆえ、まずは「試し買い」という発想になるのだ。年明け早々に、再び、NYでの日本株談義に招かれることになりそうだ。
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
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