イラン、核査察妨げIAEAと対立 ウラン濃縮も再開
【ジュネーブ=細川倫太郎】国際原子力機関(IAEA)は7日、特別理事会を開き、イランがIAEAの査察官の活動を妨げたとされる問題を協議した。各国から非難が相次いだが、イラン側はこれを否定。同日、イランは米国の制裁への対抗措置としてウラン濃縮も再開しており、国際社会からの批判が一段と強まる可能性がある。
イランは先週、中部ナタンズの核関連施設で「疑わしい物質を持っていた」などとしてIAEAの女性査察官の立ち入りを拒否した。IAEAはイランがこの査察官の同国からの出国を遅延させたことも確認した。
特別理事会で米国は「イランによる拘束はひどい挑発で、このような行動は容認できず、報いを受けるべきだ」と非難した。欧州連合(EU)も深い懸念を表明し、「将来、このような事件が起きないことをイランに求める」と述べた。査察は崩壊の瀬戸際にあるイラン核合意の重要な柱なだけに、非協力的な態度が続けば深刻な状況に発展しかねない。
IAEAはかねてイランの核活動について明確な説明がなされていないとして、イランに迅速な情報提供を求めている。透明性が確保できなければ、イランの核開発状況の正確な検証は難しくなる。
一方、イランの代表は理事会後、記者団に対して査察には「協力している」と述べ、施設への入場拒否は「探知機が反応した」と説明。女性査察官の拘束疑惑についても「拘束はしていない」と否定した。IAEA関係者によると、IAEAはイラン側の説明には同意していないとし、今後もイランと協議を続ける方針だ。
イランは米国による制裁への対抗措置として、核合意の履行義務を段階的に停止している。7日には第4弾として、中部フォルドゥの地下施設でウランの濃縮を再開した。近く濃縮度を原発燃料などに使用される4.5%程度にする。これに先立ちフランスのマクロン大統領は6日、「イランの決定は核合意の枠組みから離脱したことを意味する」と懸念を表明した。
外交筋によると、IAEAはイランで未申告とみられる核物質も検出しており、イランの核開発に対する不安や緊張が高まっている。