2部でこそ味わう危機感 もっともっとゴールを
9月から所属するウエスカのスタジアムの収容人数は8千人に満たない。クラブハウスはプレハブのロッカールームとジムがあるだけ。僕に不満はない。むしろこの規模の施設でスペイン1部リーグに昇格したのが素晴らしいと思う。2部に降格した今も返り咲く夢を抱き、戦う選手やサポーターを見ると、施設や見栄えは関係ないと感じる。
9月下旬にゴールした後、3試合得点がなかった。結果も1勝1分け1敗。昇格を目指すクラブのストライカーとして居心地の悪さを感じた。
英プレミアリーグのレスター時代は周囲に合わせることを重視した結果、点取り屋として評価されなくなった。ストライカーの感覚を取り戻すのと同時に仲間に僕という選手を分かってもらうために、新天地ではゴール前でチャンスを待つことを選んだ。
しかし、結果が出ない。自分の考えを改めるべきかもと揺らぎ始めた10月19日のルーゴ戦で得点を決められた。ゴール前の僕に横パスが来たのは、そこにいるとチームメートが理解してくれていたからだろう。ストライカーでありたいと願い、プレーし続けてきた結果だと思う。
ルーゴ戦は敗れたが、僕にとっては非常に良いタイミングのゴールとなった。10月27日のエルチェ戦では先制点を挙げ、勝利に貢献もできた。そうすると「あと1、2点決められたのに」という悔しさの方が大きくなるのだが。
2部とはいえ、レベルは高いと思ってスペインに来た。実際、選手たちはうまいしサッカーをよく知っている。クラブ間の力も拮抗し、簡単なリーグではない。それでも2部は2部だ。
「もし、ウエスカで先発から外れたら、ベンチ外になったら……」と考える。レスターでも落胆したのだから、2部で同じ扱いを受けたら数倍のダメージがあるかもしれない。その危機感は、1部リーグでプレーしていた時とは違う感情だ。後がない、崖っぷちに僕は立っている。
ここで結果を出さないと、スペインやイタリアの1部リーグでプレーすることはなくなる。1部でプレーしたい僕にとって、ここは通過点であり、早く抜け出すにはウエスカを昇格させるのが一番の近道。となると普通にプレーできているだけではダメだ。
「1部に比べれば、2部の方がレベルは低い」という声がある。それは事実だ。しかし、レベルの高低だけでは語れないプレッシャーが2部にはあり、1部を戦うのとは違う種類のメンタルの強さが求められるのも確かだ。
監督に信頼され、ありがたいと感じる一方、チームメートの昇格に懸ける心情を思うと、もっともっとゴールは必要だ。スペイン語もろくに話せない外国人ストライカーがチーム内で堂々とするには、結果を出すしかない。
(ウエスカ所属)