みんなのタクシーにKDDI・ドコモが出資
ソニーやタクシー会社が出資し配車アプリを手掛けるみんなのタクシー(東京・台東)は5日、KDDI、NTTドコモと資本業務提携したと発表した。両社とも出資額は非公表。自動運転や次世代移動サービス「MaaS(マース)」の開発が進む中、タクシーが持つデータへの注目度が高まっている。通信両社は出資によりタクシー業界との関係を深める狙い。
KDDI、NTTドコモに加え、地図関連サービスのゼンリンデータコム(東京・港)、タクシー大手の帝都自動車交通(東京・中央)とも資本業務提携した。ゼンリンデータコムとは、タクシーの走行データを利用した3Dリアルタイムマッピング技術の活用などで協業する。
このほか、JR東日本とマースに関し業務提携した。みんなのタクシーに出資済みの国際自動車(東京・港)、大和自動車交通(東京・江東)、チェッカーキャブ(東京・中央)のタクシー約9000台でJR東のマースアプリ「Ringo Pass(リンゴパス)」を使えるようにする。
みんなのタクシーは4月から東京都内で配車アプリ「S・RIDE(エスライド)」を展開し、国際自動車など大手が導入している。9月時点の1日あたりの実車件数はスタート時の約18倍に伸びた。2019年度中にも多摩や横浜地区にサービスを広げる方針。タクシーの走行データから、乗客が見込めそうなエリアをドライバー向けに表示する、需要予測サービスの提供も始めている。
みんなのタクシーはKDDIとNTTドコモとの資本業務提携を通じ、両社が持つ数千万の顧客基盤を取り込みたい考え。ドコモのスマートフォン決済「d払い」の利用者は1000万人、KDDIの「auペイ」は600万人に達する。ソフトバンクと中国配車大手の滴滴出行(ディディ)が出資するDiDiモビリティジャパンなど先行サービスに対抗する。
一方KDDIとドコモは「ビッグデータを使い(配車サービスの)需要予測の高度化に取り組む」(KDDI経営戦略本部の前田大輔氏)。両社は携帯電話の位置情報などから、個人情報は匿名化したうえで、どんな属性の人がどこに集まるかを推計する技術を持つ。今回の出資を通じ、人流データや位置情報を活用した配車サービスの競争力向上に力を注ぐ考え。(井沢真志、駿河翼)