東アジア首脳会議声明、南シナ海巡り難航
【バンコク=村松洋兵】東南アジア諸国連合(ASEAN)や日本、米国、中国など計18カ国が4日にタイ・バンコクで開いた東アジア首脳会議を総括する議長声明の取りまとめが難航している。会議終了から半日以上が経過した時点でも発表されていない。中国と東南アジア諸国が領有権を争う南シナ海問題の表現などを巡って調整が続いているもようだ。
中国やベトナム、フィリピン、マレーシアが領有権を主張する南シナ海では、中国が軍事拠点化や資源開発を進めている。首脳会議前の段階の議長声明案は南シナ海について「重大な懸念」と表記した。2018年の議長声明は「いくつかの懸念」としており、ベトナムなどが表現を強めるように要求したとみられる。
これに対し中国は激しく反発し、文言の修正を求めた。中国と経済的に結びつきの強いカンボジアなども中国の主張を支持したもようだ。声明をまとめる議長国タイの政府関係者は「首脳会議の内容を踏まえて、いくつかの文言を各国と調整している」と述べた。
東アジア首脳会議には中国の李克強(リー・クォーチャン)首相が参加する一方で、トランプ米大統領は3年連続で欠席した。代理出席したオブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が南シナ海問題で中国をけん制したとみられるが、同氏は閣僚級よりも「格下」で米国の発言力の低下が指摘される。
米国の存在感低下の間隙を突き、中国はASEANとの関係強化に動いている。3日に開いたASEANとの首脳会議では、広域経済圏構想「一帯一路」の一環でASEAN域内の交通網整備への協力を合意した。5日には李首相がタイのプラユット首相と会い、中国とタイを結ぶ鉄道の建設推進など、タイへの投資拡大で一致した。