「東南ア新興企業投資、中印と違い飽和せず」VC幹部
「東南アジアのスタートアップ投資市場は中国やインドのようには飽和状態になっていない」。シンガポールに本拠を置くベンチャーキャピタル(VC)であるジャングル・ベンチャーズの幹部、アミット・ベドプラケシュ・アナン氏はディールストリートアジアに対して語った。
ジャングルは2012年に創業した東南アジアで老舗のVCだ。域内の消費者向けブランドやソフトウエアの企業に投資している。出資先にはタイのファッション小売りポメロ(Pomelo)やインドネシアの美容関連ネット通販ソシオラ(Sociolla)、フィンテックを扱うクレディボ(Kredivo)などがある。
ジャングルのファンドに資金を投じてきたのはシンガポール政府系投資ファンドのテマセク・ホールディングス、世界銀行グループの国際金融公社、バンコク銀行傘下のVC、米シスコ・インベストメンツなどだ。
ジャングルはこのほど2億4000万ドル(約260億円)を調達した。この資金で東南アジアの10~15のスタートアップに出資する計画だ。19年に入ってからは、海外の投資家からの関心が高まっているという。同社のファンドに資金を振り向けるうちの7割が新規の投資家だった。ほとんどが機関投資家で、うち6割が欧州、米国、中東などアジア以外からとなっている。
東南アジアでは配車大手のグラブ(シンガポール)やゴジェック(インドネシア)、ネット通販大手トコペディア(インドネシア)などのユニコーン企業が成功してきた。これを背景に、起業家に資金が届く仕組みも整ってきた。
ジャングルが12年に創業した際は、出資すべきかどうかを確認するスタートアップの数は年200~250社程度にすぎなかった。いまや初期段階のスタートアップ5~6社に出資するために確認する企業数は3000社くらいまで膨らむ。
ジャングルのアナン氏は「東南アジアでスタートアップが市場を開拓できる余地はまだたくさんあるし、投資家が注目すべきスタートアップも多数存在する」と話す。この状況はスタートアップ1社の資金調達に多数の投資家が群がる中国やインドとは異なるという。
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