会社を辞め、会社を買いました 病を機に「経営者」へ
東京都内の駅前の雑居ビルにある小さなマッサージ店。石川拓真さん(仮名、51)は7月、この店を個人で買収し、経営者になった。
受付に座る石川さんは洗いざらしのシャツとジーンズに野球帽。イタリアンブランドのスーツに身を包み、外資系保険会社で働いていた2年前までとは別人だ。「昔の同僚が見たら驚くでしょうね」。帽子を取ると、髪が抜け落ちていた。がん治療の副作用という。
会社員時代は営業畑を歩んだ。新人時代から数千万円の予算を動かし、保険金詐欺集団を相手にしたこともあった。管理職になってからは夜中まで海外本社と折衝を重ね、終電に駆け込んだ。
月収は100万円を超え、ハードな仕事にやりがいも感じていたが、気付かぬうちに体は限界を超えていた。10年前、アレルギー性疾患の発作で
多様化する働き方や社会の変化に戸惑いながらも、答えを探す人たちの群像を描きます。