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知将ジョーンズ、届かぬ「あと1勝」 イングランド

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ラグビー・ワールドカップ(W杯)の決勝が2日に行われ、南アフリカがイングランドを32-12で破り、3度目の優勝を果たした。またもトロフィーを取り逃がすことになったのが、イングランドのエディー・ジョーンズ監督。縁の深い日本での初優勝を目指したが、母国オーストラリアを率いた2003年大会に続いて敗れ去ることになった。

「世界で2番になった。銀メダルでも価値がある」。試合後の記者会見では悔しさを押し隠したジョーンズ監督だが、直前の表彰式のしぐさが雄弁だった。壇上から降りた瞬間、首からメダルを外し、さっさとポケットにしまった。

誤算続きだった決勝

こちらの言葉の方は本心だっただろう。「なぜうまくいかなかったのか分からない。いい準備ができたのだが」。ユーモアと皮肉に満ちた普段の発言とは違う、素直な物言いだった。

03年大会の決勝は、延長の末にDG1本の差で敗れる紙一重の勝負だった。今回は内容でも完敗に近い。戦前の下馬評では有利だったこともあり、失望は深い。

誤算がいくつもあった。まずはスクラムの崩壊。ほぼ全ての場面で押され、6度も反則を犯した。攻撃でもチャンスまではつくれたが、ゴールラインは割れず。終盤には南アフリカの重い当たりで選手の足が止まり、何もできなくなった。

流れを押し戻そうと、必死に手は打った。スクラムの劣勢を挽回するため、プロップやロックを後半早々に交代。しかし、力関係は大きく変わらなかった。相手の反則気味のタックルに狙われていたSOフォードも早めに代えたが、こちらも効果は薄かった。

相手の強みを出させず、相手の嫌がることを徹底するというジョーンズ監督の長所が、この日は全く生かせなかった。

対照的だったのが準決勝。大会2連覇中のニュージーランドに対し、作戦や選手起用が全てはまって快勝した。「この試合に向けて2年半かけて準備してきた」という会心の勝利で、選手が精神的、肉体的に出し切ってしまった部分はあるのだろう。

日本を率いた前回大会、南アフリカを破った「史上最大の番狂わせ」にも象徴されるように、監督の最大の強みは「この1戦」に懸けた長期計画と、綿密な準備。それだけに、目標を達成した後の反動も大きくなるのかもしれない。

記者会見で「準決勝があまりに良かったから、二日酔いのようなものがあったのか」と問われると、「そうかもしれない。ラグビーではそういうことが起こりうる」。こちらも珍しく素直に認めていた。

コーチなら誰もが夢見るW杯の優勝だが、ジョーンズ監督にとっては殊更、大きな意味を持ってきた。長年、蔑視されてきた自称「アウトサイダー」の、人生のゴールだったからだ。

今大会、メディア用に用意される食事で、他の食事より減りが遅い食品があった。昆布を具に入れたおにぎり。欧州の人があまり海藻を食べないからだが、ジョーンズ氏がもし解説者としてこの場にいたら、すぐになくなっていたかもしれない。

人生最初の記憶は3歳の時のものだという。海岸を一人で歩いていた。両手に抱えていたのは海藻。「家のごちそうが海苔(のり)を巻いたおにぎりだった。海苔(のり)を持って帰ろうとしたんだ」

家に戻ると、日系2世の母から諭された。「それは違う海藻よ」。日本の海苔は豪州の海岸には生えていない。「おかしな思い出だよ」と本人は笑うが、人生の最初から「アウトサイダー」だったことを物語る逸話である。

ラグビーで差別を見返す

当時の豪州では、白豪主義と呼ばれる有色人種の移民を排斥する政策が採られていた。ジョーンズ氏も東洋系の顔立ちから、学校では中国人の蔑称「チン」と呼ばれた。

周囲の差別を見返す手段がラグビーだった。現役時代は、小柄ながらも機敏なフッカーとして、豪州代表に紙一重まで迫る。日本の東海大で始めたコーチ業は天職だった。3時間の睡眠時間、世界中の専門家を尋ねて回る勉強熱心さ……。誰もが認める「ハードワーク」で数々の勝利を収めてきた。

W杯での成績も目覚ましい。監督として通算14勝。敗戦はたった3度で、中3日の強行日程だった前回大会の日本―スコットランド戦と、2度の決勝だけである。今や「史上最もW杯を知るコーチ」だろう。

それでも「アウトサイダー」という立場は変わっていないと本人は考えている。15年末にイングランド代表初の外国人監督に栄転。世界最多タイのテストマッチ18連勝などの結果を出しながらも、「ラグビーの母国」では外国人監督へ根強い反発が続いた。メディアも豪州なまりの発音などをしつこくからかう。少しでも負けようものなら、激しくたたかれてきた。

ただ、逆境にめげるどころか、むしろ闘志をかき立てられてきたのがこの人らしさである。イングランドが苦戦していた昨年3月、こう話してくれた。「豪州では最初、アウトサイダーだった。日本でもイングランドでもアウトサイダーだ。失敗すれば大きな批判にさらされる。でも、それこそが自分を突き動かしているのかもしれない」

「アウトサイダー」から「ナイト」へ

この十数年、良く口にしてきた言葉がある。「03年に優勝していれば、今ごろはサー・エディー・ジョーンズだっただろう」。英国王室からのナイトの叙勲を取り損なったという冗談の一方、「あの敗戦が人生で最大の挫折」とも認めてきた。

「その傷は監督としてW杯で優勝するまで消えないと思う」とも話してきた。最大のチャンスを逃した後、59歳の知将はどこへ向かうのか。イングランドでの任期は21年まであるが、関係者によると、様々なチームからのオファーも届いている。

「アウトサイダー」から、誰もが認める「ナイト」への道はまだ途中。トップレベルでの監督業はまだまだ続くはず。「子供向けのラグビー教室をつくる」という将来の夢も、しばらくお預けだろう。

ジョーンズ監督にとって、再び険しい道のりのスタートなのかもしれない。ただ、ファンやラグビー界の人にしてみれば、そのハードワークと、良く鍛えられたチームを目にするチャンスが広がることにもなった。

(谷口誠)

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