首相、南シナ海問題「平和的解決」訴え ASEAN会議出席へ
【バンコク=秋山裕之】安倍晋三首相は3日、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席するため、政府専用機でバンコクに到着した。一連の会議では中国が軍事拠点化を進める南シナ海を巡る問題が主要なテーマとなる。首相は中国による一方的な現状変更に反対し、国連海洋法条約に基づいた航行の自由を重視する日本の立場を主張する考えだ。
出発に先立ち、羽田空港で記者団に「すべての当事者が力ではなく国際法に基づいて紛争を平和的に解決することの重要性を強く訴えたい」と強調した。
日本や中国、インドなどを含めた16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉に関する首脳会合にも出席する。RCEPを巡っては関税削減に慎重なインドとの交渉が難航し、年内妥結は困難な状況になっている。
首相は交渉に関し「大詰めを迎えた」とする一方で「まだ課題は残されている」との認識を示した。「自由で公正なルールに基づく経済圏をつくるために日本が今後も交渉をけん引していく」とも述べた。
首相は米国や中国、韓国などを含めた東アジア首脳会議で安全保障に関する考えを表明する。米国と歩調を合わせる「自由で開かれたインド太平洋」構想を訴え、ASEAN加盟国にも連携を呼びかける。
北朝鮮については「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)」が必要だと唱える見通しだ。日本人拉致問題の早期解決に向けた協力も求める。首相は「朝鮮半島の非核化を目指すために今こそ国際社会はしっかり団結し、国連決議を履行することが極めて重要だ」と語った。
4日には中国の李克強(リー・クォーチャン)首相と会談する。来春の習近平(シー・ジンピン)国家主席の国賓来日に向け、日中関係の発展を話し合う。12月下旬に予定する日中韓首脳会談に関しても調整する。5日に一連の会談を終えて帰国する。