日立建機、AIで建機部品の受注を先読み
日立建機がデータを駆使して受発注業務を効率化する。建設機械の稼働データ、販売データなどを人工知能(AI)で分析し、顧客の受注を予想してスピード納入する仕組みをつくる。複数の部品の交換などを1度で効率良くこなし、メンテナンス費用も抑える。顧客は継続使用するほど「ライフサイクルコスト」が安くなる。建機本体の販売に頼らず、新たなビジネス基盤を構築する。
新たに始めるサービス「コンサイトパーツウェブショップ」は、販売代理店がインターネットを経由し、建機、鉱山機械に使う純正部品を購入できるシステムだ。
これまでは技術サービスマンが顧客の現場に出向き、必要部品を確かめたうえで、日立建機に在庫状況や価格をチェックしていた。新サービスではスマホやタブレットでその場で見積書を作成できる。主要建機の20トンクラスの油圧ショベルであれば、土を掘り出すバケット、消耗部品のフィルターなど1500種類の部品をそろえている。
9月から日本市場で先行して実用化してきたが、今後東南アジアやロシア・独立国家共同体(CIS)、アフリカなど世界に広げる。
ビッグデータも活用し、注文の二度手間を防ぐ。過去のデータを分析することで、あわせて交換した部品履歴などを表示する。技術サービスマンが一度の派遣でメンテナンスを終わらせることで修理費を抑えられるという。
様々なサービスとデータを連係する。同社が提供する建機の遠隔監視サービス「コンサイト」は、油圧ショベルの油の状態を監視するなど、故障を未然に防ぐという機能を持たせている。こうしたデータを結びつけ、部品交換にかかるスケジュールを短縮する。
コンサイトは、2019年3月末時点で全世界で約13万台の建機に使われており、ネット発注を含めてサービスを一貫提供していく。建機本体は海外の現地メーカーの製品と比べると割高になるが、販売後のライフサイクルも含めたコスト競争力を訴える武器にする。
日立建機は、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を活用した建機の情報の活用を急ぐ。例えば、定期的な稼働情報や故障など緊急時のアラームなどを記載したリポート作成、建機のオイル監視サービス「コンサイトオイル」だ。
コンサイトは定期リポートと緊急リポートの2種類を用意しており、1台が各月1000円(税別)。コンサイトを導入している販売代理店は、無料でコンサイトパーツウェブショップを利用できる。
コンサイトは、蓄積されたノウハウやセンサー、AIなど様々な技術を駆使して建機の状況を正確につかめるようにする。19年度に71%と見込む異常を検知してアラートする予兆検知率を、20年度以降に90%にする。
予兆検知率90%が実現すれば、将来は「必要なときに部品がすでに近くに届くようになる」(猪瀬聡志コンサイト開発部長)。在庫を効率的に持てるほか、販売の機会ロスもなくなり、顧客の囲い込みにつながる。
新車販売以外の部品・サービスや中古車、レンタルなどの「バリューチェーン事業」の比率は16年度に35%だったが、19年度は44%に高まる見通し。市況の浮き沈みに左右されにくい収益モデルをめざす。
(企業報道部 西岡杏)
ビジネスの最新動向やDXやSDGsへの取り組み、スタートアップ企業の動向などを特集。ビジネス専門紙「日経産業新聞」のコンテンツをまとめてお読みいただけます。
関連企業・業界