ラグビーの熱気、五輪でも 声援が選手の大きな力に
ラグビーのワールドカップ(W杯)が盛り上がりました。同時期にテニスのジョコビッチ(セルビア)、ゴルフのウッズ(米国)らも日本でプレーして話題になったし、「スポーツに熱い国なんだ」と、世界に伝わればいい。
僕は高校のとき、体育の授業にラグビーがあった。当時の東京・本郷高は強く、ラグビーを専門とする体育教師もいたからか、バスケットボールなどの競技よりラグビーをする時間の方が長かった。
といっても未経験者が大半なので、ヘッドギアをつけ、スクラムの組み方、強く当たるといったことを学ぶ程度だが、「こんなに痛いのに、よくやるなぁ」と感心した記憶がある。水の中では痛い思いをしたことはないので。
そんな個人的な経験もあってW杯をより楽しめた。幼少期から育った文京区周辺は、親が経験者といった環境にでもないとラグビーをやる機会は身近にない。縁遠い競技だと思っていたら、日本代表の松島幸太朗が同じ小・中学校出身と知って驚いた。
今回のラグビー代表がよかったのは、チーム全体に対してスポットが当たったこと。個人競技はスターに依存しがちだし、団体競技でもサッカー・イングランド代表のベッカムのような存在が人気もプレーもけん引する現象が起こりうる。ラグビー代表は試合ごとにヒーローが違い、「チーム一丸」の躍進ぶりが日本人の心に刺さったと思う。
チームの半数が外国出身の選手だったものの、「日本人じゃない」というような声はあがらなかった。テニスの大坂なおみ、バスケットボールの八村塁などの登場で「ダブルアスリート」の活躍が当たり前になったという時勢もよかったかもしれない。
日本の文化を学んで溶け込みつつ、これまで日本になかったようなものを持ち込み、日本のために戦ってくれる彼らのような存在が、競技レベルを底上げしてくれる。相撲の白鵬、箱根駅伝を走る留学生もそうでしょう。それなのに「あいつらは体格が違う。日本人じゃない」と言われたら、どんな気持ちがするか。
改めて感じたのは、「プロ」として興行が成り立つ競技の観客を呼ぶ力だ。いわゆる伝統的な五輪競技の世界選手権は、観客の大半が競技にかかわってきた人だ。「プレー経験はないけれど、この競技が好きで来た」という人は少なかったりする。そんな競技もライトなファンを引き込めるのが五輪だ。
今回のW杯のような声援が選手たちを後押ししてくれるだろう。それがとてつもない力になることも再確認できた。桜戦士たちのように見る者の胸を熱くする戦いができるか。次はオリンピアンの番だ。
(北島康介)