スルガ銀行創業家、ノジマへの全保有株売却を発表
日本橋の東京支店ビルも売却
スルガ銀行は25日、創業家がファミリー企業経由で保有している同行のすべての株式(13%強)を家電量販大手のノジマが取得すると発表した。ノジマはすでに5%弱の同行株を持つ大株主で、保有比率は18%強に上がる。2018年に投資用不動産への巨額の不正融資が発覚。営業現場の暴走を招いた企業統治不全の象徴だった創業家の影響力を排除し、まずはノジマと再建をめざす。
ノジマは140億円でスルガ銀株を取得する。同社は発表文で「当社の既存事業と金融サービスを融合させた利便性の高い新たなサービスを創出し、金融デジタル経済圏をつくる」と筆頭株主になる狙いを説明した。
ファミリー企業が所有し、スルガ銀の東京支店が入居する東京・日本橋の不動産は大手デベロッパーに売却する。
スルガ銀は静岡県沼津市の相互扶助組織を源流として1895年設立。初代頭取以降、岡野家の出身者が主にトップをつとめてきた。1985年に頭取に就いた岡野光喜前会長は30年以上にわたって経営し続けた。
スルガ銀では創業家のファミリー企業が融資を受けた450億円の返済が滞っていた。現経営陣は創業家のスルガ銀株や不動産の差し押さえといった強硬手段も視野に交渉し、妥結した。創業家は株や不動産の売却資金を原資にスルガ銀に返済する。
スルガ銀ではシェアハウスなどの投資用不動産を対象にした融資で、審査書類の改ざんや契約書の偽造といった不正行為が横行した。不正が疑われる分も含めると不適切融資の規模は1兆円超に達した。18年10月には金融庁から融資業務の一部停止を含め業務改善命令を受けた。創業家の岡野前会長ら当時の経営陣は引責辞任した。
スルガ銀は外部人材の起用などで経営陣を刷新し、再建の途上にある。焦点の一つが創業家との関係の清算だった。行員を不正行為に駆り立てた過剰なノルマや、管理職らのパワハラを招いた利益至上主義の社内文化は根っこに、創業家支配による統治不全があったとされた。金融庁も業務改善命令で創業家との関係を事実上、清算するよう求めていた。
スルガ銀は投資用不動産向け融資に偏ったビジネスモデルの転換を進めている。個人向け金融(リテール)に軸足を置く方針で、本業の家電量販で金融サービスを拡充したいノジマも相乗効果が見込めると判断した。