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東大が液晶から高精度な水処理膜 均一な穴で用途拡大

NextTech2030

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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

テレビやパソコン、スマートフォンなどに幅広く使われる液晶パネルやディスプレー。社会を劇的に変えたこのデバイスの素材である液晶には、実はほかにも多くの可能性が残されている。東京大学の加藤隆史教授は液晶分子が秩序だった構造になる性質を利用し、水を浄化する水処理膜を開発している。2030年ごろには飲み水や化学工場のろ過システムなどを大きく変えている可能性がある。

液晶分子には様々な形があるが、よく使われるのは棒状の分子だ。液晶は液体と固体の間の状態と考えられ、分子は液体のように自由に動くが、棒の向きは固体のように秩序を持って同じ方向を向く性質がある。液晶分子が秩序を持つ性質は「自己組織化」と呼ばれる。

この性質を利用したのが液晶ディスプレーの表示素子だ。シャープなどが1970年代に電卓の表示部分に液晶を使った。棒状の液晶分子の向きを縦から横に制御することで、光の通りやすさを変え、白黒表示を実現した。その後、液晶はカラーテレビなどに応用された。

この技術を発展させ、水処理に応用しようというのが加藤教授の研究だ。これまで使われてきた棒状の液晶分子よりも複雑な構造を作ることで、新しい機能を引き出せるとみている。分子構造を工夫し自己組織化で秩序だった構造を作れば、ナノ(ナノは10億分の1)サイズの様々な形が実現できるという。

加藤教授らは、実際に液晶分子を固め、液体中から狙った物質をろ過する水処理膜を作製した。扇形の液晶分子がいくつも集まって筒状になり、それが無数に並ぶことで膜になる。筒の真ん中には、0.6~2.4ナノメートルの狙った大きさの穴が形成される。水の分子はこの穴を通るが、ウイルスは通過できず、99.996%以上ろ過できるという。

液晶で作った水処理膜は、狙った物質を可能な限りすべて取り去りたい「究極のろ過膜」になると加藤教授はみている。海水の淡水化などに使われる逆浸透膜などと比べて、穴の大きさが均一になるのが特徴で、除去率が非常に高い。ウイルスは20ナノメートル以上のサイズがあり、ほぼ完全に取り去れる。逆浸透膜と併用して安全な飲み水を作るなどの応用が期待できる。

現在は穴の大きさを自在に制御する技術を開発中のほか、除去したい物質を含む水を膜に通す際の圧力を減らす研究にも取り組んでいる。

加藤教授は開発した液晶の膜は水処理膜以外にも多方面で活用できるとにらむ。その1つが、リチウムイオン電池の内部でイオンを運ぶのに使われる電解質の一部だ。穴の大きさが均一になる利点を生かし、効率的にリチウムイオンを通過させながら、発火の原因になる電解液の漏れを防ぐ効果も期待できるという。液晶が光や圧力に反応する性質を使って、センサーやモーターなどを作る研究も進んでいる。

「液晶テレビの分野は成熟したが、液晶分子の使い道はまだまだ広がる」と加藤教授は強調する。

液晶分子の利用に向けた研究開発は半世紀前にさかのぼる。1960年代、無数の液晶分子が集団で秩序を持ち、電場で制御できることがわかり液晶ディスプレーに応用された。同時期に米デュポンは、液晶分子を利用してパラ系アラミド繊維を開発した。液晶分子を並んだまま固めると強度や伸縮性に優れた素材が作れた。現在でも強度の高い軍手や、自動車や航空機のボディーの一部に使われる。
 一方、化学工場や浄水設備などさまざまな場面で使われる水処理膜は現在までに数多く開発され、進化し続けている。除去したい物質の大きさに合わせ、素材も多様だが液晶分子の利用はこれまでほとんど検討されてこなかった。
 これまでの膜で、ナノサイズの穴を開ける場合に課題となってきた穴の不均一さを克服し、ほぼ同じ大きさの穴を設計できる加藤教授の液晶水処理膜。1~10ナノメートルの大きさの比較的大きい分子からウイルスまで正確に分けられる見込みだ。
 液晶の水処理膜が広まれば、化学工場の蒸留による混合物の分離を膜に置き換えられる可能性がある。ブラウン管に置き換わった液晶ディスプレーのように、液晶の水ろ過膜が水処理技術に世代交代を促すかもしれない。

(小船井真悟)

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