「地銀は10年でコスト1割減を」 日銀試算で提示
手数料収益1割増も
日銀は24日に発表した金融システムリポートで、地方銀行の経営維持に必要な取り組みと効果を示した。10年間で経費を1割減らし、融資をはじめとした伝統的な資金運用業務とは異なる経営助言などの利益を1割弱増やした場合、経営改善効果がみられるとした。想定する経費削減は従来の2倍のペースだ。低金利や人口減で経営環境の厳しい地銀に対し、事業改革の加速を促した。
金融システムリポートは金融システムの安定性を評価、検証するため半年に1度まとめている。低金利環境が長引き、金融機関による融資の利ざやが縮小するなかで、近年は特に厳しい地銀の分析に力を入れている。
今回のリポートでは、地銀にできる経営努力として人件費や店舗運営費などの経費削減のほか、手数料収入を得る「非資金利益」の拡大を挙げた。具体的には事業承継などの経営課題を解決するコンサルティングや家計の資産形成支援に開拓余地があるという。
日銀は10年間で経費を10%削減し、非資金利益を8.9%増やすような経営努力をした場合、経営指標に変化が見られるとの試算を示した。経費を5%減とするシナリオも示したが、その場合は同じ効果を得るのに非資金利益を29.7%増やす必要がある。経費を15%削減できれば非資金利益は1.4%増で済む。
地銀を中心にした国内基準行96行の当期純利益の総資産利益率(ROA)は2018年度に0.18%だった。経営努力をしない場合、10年後に0.01%まで落ち込むのに対し、経営努力をすれば0.07%までの低下に抑えられるという。
日銀は前回の4月のリポートで、資金需要が減少した場合、10年後に約6割の地銀が最終赤字になるとの試算を示して話題になった。日銀幹部は「厳しい経営環境は変わらない」と強調したうえで「経営努力により、ある程度の収益改善効果が期待できる」とした。
今回のリポートでは貸倒引当金など与信にかかる信用コストの増加にも注目した。地銀の貸出残高に対する信用コストの割合は18年度に0.12%となり、前年度の3倍に急上昇。金融機関からも懸念する声が上がる。
地銀は08年のリーマン・ショック以降、中小企業金融円滑化法などに基づいて経営状態の悪い企業も返済条件の緩和などで支援してきたが、経営改善が進まず、格付けを引き下げざるを得ない例が増えてきた。大都市圏への越境融資を進めて金利競争に巻き込まれたり、情報不足から信用力の低い企業に融資したりする例もあるという。
日銀幹部はリポートで想定した経営努力について「難易度は高く、これまでの努力を加速させる必要がある」と話す。
全国地方銀行協会によると、18年度の地銀64行の経費合計は2兆2646億円で、10年前に比べ5.4%の減少にとどまった。物件費は1割以上減らしたものの、人件費は1%減どまりだった。過去10年の実績の2倍に近い経費削減は実現のハードルが高い。