非インデックス型のインデックス運用(投信観測所)
投資信託の目論見書には投資対象資産や投資対象地域などの商品分類情報が明記されており、ファンドの性格を知る手がかりになる。商品分類に補足分類として「インデックス型」とある場合は、指数連動型のインデックス運用を行うファンドと解釈され、逆に明記されないとアクティブ運用をしているとみなすこともできる。
ところが、実際にはインデックス運用していても「インデックス型」と明記されておらず、アクティブ型に区分されるファンドが少なくない。どういうことか。現状を整理してみた。
インデックス運用9本中、「インデックス型」は4本のみ
「インデックス型」の代表例は株価指数連動型のインデックスファンドで、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)への連動を目指すファンドやETF(上場投資信託)はみな「インデックス型」だ。こうした単独の指数に連動した運用を行うファンドは例外なく、目論見書に「インデックス型」の記載がある。
それでは、複数の資産に分散投資するバランス型ファンドで指数連動のインデックスファンドを組み合わせて運用している場合はどうか。実際の具体例として、つみたてNISA(積み立て型の少額投資非課税制度)の対象ファンドについて、バランス型の純資産残高上位を表にしてみた(図A)。
残高上位10本のうち、目論見書の「ファンドの目的・特色」で「ベンチマーク(運用を評価するための指標)を上回る運用成果を目指す」と明確なアクティブ(積極)運用宣言をしているのは「ハッピーエイジング・ファンド ハッピーエイジング40」の1本のみで、他9本は指数連動のインデックスファンドを組み合わせた運用をしている。ところが、このうち「インデックス型」と明記しているのは4本にとどまる。
例えば、残高トップの「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」は目論見書で「バンガードのインデックスファンドに投資する」とあるが「インデックス型」の明記はない。残高2位の「世界経済インデックスファンド」はファンド名に「インデックスファンド」とうたっているのにもかかわらず「インデックス型」ではない。
運用会社が定める合成ベンチマークの有無が決め手
インデックス運用しているのに、なぜ「インデックス型」ではないのか。その答えは「インデックス型」と明記している「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」、「三井住友・DC年金バランス50(標準型)」など、図Aで〇印のついたファンドの目論見書に記された言葉に見つけることができる。それは「合成ベンチマーク」や「ベンチマーク(合成指数)」への連動という言葉だ。
一方で、インデックスファンド8本に均等分散投資しているが「インデックス型」と明記されていない「iFree 8資産バランス」は、「合成ベンチマーク」にあたる言葉や説明が見当たらない。
投信運用業界関係者らの話を総合すると、目論見書に「インデックス型」と明記してあるのは、特定の指数や合成指数など単独の指数への連動を目指すファンドのみで、合成指数が存在しない場合はインデックスファンドを組み合わせて運用していても「インデックス型」にはしないというルールになっているそうだ。
ただし、インデックスファンドを組み合わせて運用する場合でも、合成指数の設定自体が難しかったり、合成指数を定義しないでインデックス運用をしたりする場合もあり、「インデックス型」と目論見書に明記されるどうかは、合成指数を巡る運用会社の方針によって違ってくる。それが、運用実態と目論見書の商品分類情報との間の齟齬(そご)を招く要因になっている。
ここでは、つみたてNISA対象のバランス型を例にとったが、バランス型ファンド全体を通じても同じ状況にある。バランス型以外でも、複数のETFに投資していながらも「インデックス型」ではないファンドが散見される。
さらに、ファンドによってはインデックスファンドの組み合わせ運用をしていても、その基本配分比率を固定せずに「アクティブ」に随時変更するので「インデックス型」には該当しないという考え方をとる場合もあるようだ。
このように現状では投資家が目論見書の商品分類の「インデックス型」だけを頼りにして、ファンドの運用実態がインデックス運用、アクティブ運用のどちらなのか無条件に区分することはできないのを知っておきたい。
(QUICK資産運用研究所 高瀬浩)