11月4日、浦和でJBC 地方競馬活性化の一歩に
浦和競馬場では初開催となるJBC(ジャパン・ブリーディングファームズカップ)競走が11月4日に迫ってきた。9月に新スタンドが完成し、あとはレース当日を待つばかり。JBC競走を前に、埼玉県浦和競馬組合総務課の飯田泰士さんに、開催招致までの苦労や現在の心境などをうかがった。
かつては交流重賞競走の取材で浦和競馬場に何度も足を運んだものだが、最後に訪れたのは10年以上も前のことになる。印象に残っているのは、ダート競馬2戦目だったヴァーミリアンが快勝した浦和記念。まだ陣営もダートへの適性などを含め手探り状態の中、このレースを完勝してその後のダート路線変更に自信を深めるレースとなった。レースを終えて引き揚げてくる関係者を、取材スペースを探すのに苦労しながら話を聞いた覚えがある。
■スタンド改修、コースも広げる
浦和競馬場は住宅街の真ん中にある。1周が1200メートルのコンパクトな競馬場だ。他の関連施設も限られたスペースに置かれているため、規模も小さくならざるを得ない。コースやパドック、厩舎、検量場所など、中央競馬の取材で目にしているものとは明らかに違う。競馬場のコースとファンエリアとの距離も近く、コンパクトにまとまった競馬場。これは今も昔も変わらない印象だ。
「2015年ごろから、いずれは浦和競馬場でもJBC開催を実現しようと準備を進めてきました」と飯田さんは説明する。実は飯田さん、1年半前にも大関隼アナウンサーの取材を受けており、「競馬実況アナ日記」登場は2度目。前回は浦和でのJBC開催が決まった直後だった。今回は開催が間近に迫り、さすがに緊張した雰囲気が伝わってきた。
9月にオープンした新スタンドの評判は上々だ。新設の2号スタンドは、従来のスタンドよりもゴール寄りに建てられている。今までと比べて、ゴール直前の迫力あるシーンを各階のどの席からでも観戦できるようになった。座席数は733席。スムーズに馬券を購入できる投票スペース、開放感あふれるエントランスホールなど、ゆったりと競馬を楽しむことができる。真新しいスタンドの完成がJBC開催招致を後押しした要因の一つだと思うが、招致への取り組みはそれだけではない。
「スタンドの改修はもちろんですが、JBC開催の実現に向け、2000メートルのコースも発走地点を広げ、フルゲート12頭を可能にしました。今までは11頭までしか出走できなかったですから。3コーナーの内側は緩やかなスパイラルカーブに改修しました。1頭でも多く出走できるように、と考えてきました」と続ける。
レース当日は、相当数の来場が予想されている。大勢のファンが来て大いに盛り上がるのはもちろん歓迎なのだが、主催者の立場としては、心境も複雑なようだ。
浦和競馬場へのアクセスを考えると、多くのファンが南浦和駅を利用すると思われる。改札口が1つしかなく、駅前のロータリーも狭い。バス停などに大勢のファンが集中すると、大混雑になることが予想される。飯田さんは「最寄駅は南浦和駅だけでなく、浦和駅もあります。南浦和駅の混雑緩和のために、是非、浦和駅も利用してください。競馬場の周辺にある駐車場も当日は利用できません。公共交通機関での来場をお願いします」と話す。
■コンパクトな浦和でできれば
大勢のファンに加え、取材メディアへの対応にも頭を悩ませる。「浦和の重賞競走時の3倍から4倍、150人くらいの報道関係者を予想しています。皆様にはさまざまなご協力をいただきながら、安全第一に取材をお願いすることになります」。コンパクトな競馬場での開催。しかも、GI級の競走が3つもあるビッグイベントである。取材規制を含め、多くの報道関係者の対応をしながら、表彰式や馬と騎手の動線の確保など、迅速な対応が求められる。
「何度もJBCが開催された競馬場で研修をしてきました。川崎(16年)では、スタッフの一人として来賓対応を経験し、昨年は中央の京都競馬場でもJBC開催を現地で見学しました。とにかく、安心安全な競馬の開催を目指しています」と話す。
そして「浦和でJBCが開催できれば、今まで手を挙げてこなかった競馬場も誘致に前向きになると思います。地方競馬の活性化につながるモデルケースになることを期待しています。浦和でのJBCを成功させたいですね」と意気込みを話してくれた。
11月4日、浦和競馬場でのJBC開催。大いに期待したい。
(ラジオNIKKEIアナウンサー 木和田篤)