平成の式典を踏襲 国民主権や政教分離配慮
現行憲法下で2度目となった22日の「即位礼正殿の儀」は1990年の平成の式典をほぼ踏襲した。国民主権や政教分離といった現行憲法の原則を守りつつ、古くから続いていた手法を一部復活させるなど伝統を引き継いだ。
安倍晋三首相は天皇陛下が即位を宣明されたのと同じ皇居・宮殿「松の間」でお祝いの寿詞(よごと)を述べ、万歳を三唱した。様式は平成の即位礼で当時の海部俊樹首相がとったのと同じだ。
旧憲法下の昭和の即位礼は、当時の田中義一首相が一段低い庭に下りて昭和天皇を見上げる位置で万歳三唱した。首相が陛下と同じ松の間で万歳三唱するのは国民主権を意識したものだ。万歳の前に「ご即位を祝して」との言葉を添え、趣旨を明確にするのも平成から取り入れた配慮だ。
歴代天皇に伝わる剣と璽(じ=まがたま)、公務で使う御璽(天皇の印)と国璽(国の印)を高御座の台に奉安したのも平成にならった。「三種の神器」である剣璽は天孫降臨の神話に基づいている。国事行為で使う御璽と国璽も置いたのは宗教色を抑える工夫とされている。
即位礼正殿の儀を定めていたのは明治期の旧「登極令」だが、戦後廃止された。平成の代替わり時も伝統を踏まえつつ、一部の先例は国民主権や政教分離に反するとの批判を招かないように変えた。こうした変更点を今回も踏襲している場合が多い。共産党は高御座から即位を宣明する形式などを理由に「憲法の国民主権、政教分離の原則に反する」(小池晃書記局長)として即位礼正殿の儀を欠席した。
一方、天皇が高御座に登壇後、初めて参列者が姿を目にする「宸儀初見(しんぎしょけん)」は平成の儀式にはなかった。前回は参列した外国元首らへの配慮で、当時の天皇、皇后両陛下が廊下を経て進まれる姿を見えるようにしたためだ。今回は大小のモニターを活用し、松の間に入られるまで姿が見えなくても高御座の登壇後は両陛下の姿に十分接することができるようにした。
宮内庁によると、宸儀初見は平安前期の儀式書「貞観儀式」に記載がある。伝統的な形式に沿った形となった。
儀式で用いる服装は明治期から続く様式を踏襲した。天皇陛下は今回「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」と呼ばれる黄褐色の束帯をまとって儀式に臨まれた。天皇だけが着用できる最高の礼服とされ鳳凰(ほうおう)や麒麟(きりん)の文様があしらわれている。