Facebook、選挙介入対策の強化表明 乗っ取り防止など
【シリコンバレー=奥平和行】米フェイスブックは21日、国外からの選挙への介入などを防ぐ取り組みを強化すると発表した。候補者などのアカウントに対する監視強化や政府系メディアを対象とした投稿者の明示などが骨子となる。約1年後に米大統領選を控えており、対策強化を訴えて自社への批判を和らげたい考えだ。
21日にマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が電話を通じて記者会見し、発表した。ザッカーバーグ氏は「2016年から選挙は激変したが、当社も変わろうとしてきた」と述べ、これまでの取り組みへの理解を求めた。
会見ではさらに、(1)国外からの介入防止(2)透明性の向上(3)誤情報の拡散抑制――について対応を強化すると説明した。
国外からの介入防止では候補者などのアカウントの監視を強化し、乗っ取りなどの被害を防ぐ。また、過去1年間に50を超す国外からの選挙介入を目的としたキャンペーンを削除し、同日朝もイランやロシアによるものとみられるアカウントやページを除去したと説明した。
透明性の向上については政府系メディアによる投稿を対象に、投稿者を明示する仕組みを導入する。候補者ごとの広告に投下した費用にまつわる情報も提供する。
誤情報の拡散抑制ではファクトチェック(事実検証)に基づいて「誤情報」と明示。高齢者や高校生を対象とした教育にも注力し、まず200万ドル(約2億2000万円)投じる方針だ。
フェイスブックは16年の大統領選で誤情報拡散の温床となり、有権者の投票行動に影響を及ぼしたとの指摘を受けた。しかし当初の対応が鈍かったことで、社会的な批判の高まりを招いた経緯がある。次の大統領選まで1年あまりとなるこの時期に対策の強化を打ち出したのは、先手を打って批判勢力の攻撃を和らげるためだ。
ただ、批判の対象となった政治広告そのものを廃止することには否定的だ。ザッカーバーグ氏は17日に米ジョージタウン大学で「表現の自由」について講演し、このなかで政治広告について「透明性を高める」との説明にとどめた。内容を制限する必要があるとの意見に対しても「民間企業の権限で検閲すべきではない」と述べた。
ザッカーバーグ氏の見解に対して大統領選の民主党指名争いで先頭を走るエリザベス・ウォーレン上院議員は「16年からの学びが少なく、20年の選挙への備えができていないことを示した」などと批判した。フェイスブックは自社に寄せられる厳しい視線や指摘への対応を優先せざるを得ない状況が続いている。