埼玉県、介護ロボ導入後押し
埼玉県は介護ロボットの導入支援を始めた。特別養護老人ホームなどの施設にアドバイザーを派遣し、ロボットの選び方や適した使い方を指導する。現場職員の業務負担をロボットでいかに軽減するかなど、効果も検証。導入過程や成果を共有し、介護事業者が効果的にロボットを活用できるようにする。
モデル施設として入間川病院の介護老人保健施設「雪見野ケアセンター」(所沢市)や特別養護老人ホーム「三郷さくらの杜」(三郷市)など計4施設を公募で選んだ。アドバイザーは介護ロボットのノウハウを持つNTTデータ経営研究所が担う。現場職員5~9人でプロジェクトチームを立ち上げ、現場の課題やニーズを施設ごとに整理。課題に応じてロボットを選び、9月に導入した。
人手不足が深刻な介護現場では、特に日中より人数が減る夜勤体制時に精神的な負担を感じる職員が多い。特別養護老人ホーム「杏樹苑爽風館」は利用者の呼吸・心拍数を測るセンサー、「雪見野ケアセンター」は利用者が離床した際に職員の端末機器に通知したりする見守りセンサーを導入した。
現場からはこれまで「介助中に別の利用者に異変があった際、すぐに対応できるか不安だ」といった声も上がっており、利用者の状況を手元の端末で確認できるようにすることで、職員の不安軽減を図る。
「三郷さくらの杜」では、職員が人を持ち上げる際に腰にかかる負担を軽減する「マッスルスーツ」を導入し、職員の肉体的負担を減らす考えだ。介護老人保健施設「蓮田ナーシングホーム翔祐園」は、人工知能(AI)を搭載したコミュケーションロボット「PALRO」を活用して、健康体操などに用いる。
県は導入施設にアドバイザーを派遣。使用データを収集し、効果を検証する。センサーの導入前後で職員の精神的負担や利用者を見まわる巡視の回数などがどのように変化したかを見極める。重労働の介護現場では、肉体的疲労を理由に離職する人も多いため、マッスルスーツを活用した施設で遅刻や早退などの職員の勤務状況も確認する。
今後、県内の介護事業者向けに実証事業の成果報告会やモデル施設の見学会を開くほか、導入の手引書も作成する。県の担当者は実証事業を通じて「ロボットありきではなく、現場の職員が効果的に運用できるノウハウを身につけられるようにしたい」と話している。
■「従業員が不足」6割
埼玉県内の介護事業所や介護職員を対象にした介護労働安定センターの調査によると、約66%が従業員の不足を感じている。職員の1年間(17年10月1日~18年9月30日)の離職率は16.8%。離職者のうち3年未満の勤続年数の人が約7割を占める。現場からは人手不足や身体的・精神的な負担を不安に感じる声が挙がっている。
こうした状況もあり、埼玉県は介護ロボットの導入を促進することで、現場の負担を軽減し、人材の定着につなげたい考えだ。2016年度からは介護施設向けに介護ロボット購入費用の補助制度を設けた。移乗介護や入浴支援などに役立つロボットが対象で、経費の2分の1を補助する。
補助額は1台につき30万円が上限で、補助対象となるのは1事業所あたり最大3台。補助制度を利用する事業者は増加傾向で、18年度は46事業者が利用した。