エース菅野、復活の快投で巨人を救えるか
腰痛で戦線離脱していた巨人のエース菅野智之(30)が日本シリーズの大舞台で復帰する予定だ。今季はコンディションに不安を抱えたままマウンドに上がるケースが多く、球威、制球力ともに精彩を欠いた「らしくない」姿が目立った。シリーズ第3戦の先発は高橋優貴と発表され、菅野の出番があるとすれば第4戦以降となる。本拠地・東京ドームで本来の輝きを取り戻すような快投を披露し、チームの苦境を救うことができるか。
2018年は2年連続で沢村賞を手にした。同賞の選考基準である7項目(15勝以上、150奪三振以上、10完投以上、防御率2.50以下、200投球回以上、登板数25以上、勝率6割以上)を全てクリアする圧巻の内容で、文句なしの受賞だった。一転して19年は、苦難の連続と言えるシーズンを送った。
■沢村賞から一転、腰痛で計3度の2軍落ち
5月15日の阪神戦は六回途中まで投げて自己ワーストの10失点を喫し、同月下旬に腰の違和感を訴えて2軍での調整を強いられた。6月9日のロッテ戦で1軍マウンドに復帰したものの、その後もたびたび腰痛で戦線を離脱。計3度の2軍落ちを味わった。
9月4日の中日戦(前橋)では二回の投球動作中に表情をゆがめると、これ以降球速がガタッと落ち、2回4失点で降板。出場選手登録抹消後、最短での10日で復帰したが、同15日の阪神戦でも4回4失点と復調をアピールできなかった。自ら降板を申し出た菅野は「あれ以上マウンドにいてもチームに迷惑をかける。こういう形で1軍にいるのは違うと思う」。自負心の強いエースには珍しく、弱気な発言を口にした。「しっかりとした形でマウンドに上がれるように最善を尽くしたい」と唇をかみ、またも登録抹消に。そのままレギュラーシーズンを終えることとなった。
今季は、直球が本来より10キロほど遅い140キロ台前半のことがあり、得意のスライダーもすっぽ抜けて高めに浮く場面が目立った。精密機械のような制球力も鳴りを潜め、打者を寄せ付けない本来の姿はほとんど見ることができなかった。
■CS登板も自ら回避
1年目の13年に13勝を挙げるなど、今季を含めて6度の2桁勝利。7シーズンで1200イニングあまりを投げてきた。大黒柱としてフル回転を続けてきたダメージは相当なものに違いない。その字の通り、要となる腰の故障が一朝一夕に回復するとは思えず、元通りに戻すには時間がかかろう。30歳の誕生日である10月11日、阪神とのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第3戦で復帰するプランも、自ら直前の状態を判断して回避した。
1カ月ぶりの実戦登板となった10月15日の秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」の韓国・斗山戦では、6回を79球と少ない球数でまとめて4安打1失点。最速146キロをマークして三振7つを奪い、復調の兆しを見せた。
7年ぶりの日本シリーズ制覇を狙う巨人は、敵地で連敗スタートとなった。いま日本球界のエースに求められるのは、チームを鼓舞してシリーズの流れを変えるような熱投だ。今季最後の登板は、自身初の日本一に望みをつなぐため、そして20年の完全復活へ希望の灯をともす意味でも、大事なマウンドとなる。
(常広文太)