避難所もプライバシー重視 被災の長野、環境に格差
台風19号で被害を受けた長野県上田市では、避難所にテントのような素材の折りたたみ式の間仕切りを用意し、プライバシーを重視したスペースを確保した。利用者に好評だったが、こうした避難所はほとんどないのが現状。専門家は「被災者が避難をちゅうちょしない、快適な環境を整えるべきだ」と指摘する。
台風が通過した12日から15日朝まで、市立塩田中の体育館には、長さ約2メートル、高さ1.2メートルの間仕切りで四方を囲んだスペースが並んだ。床には冷気を防ぐアルミ製マットも。最大約70人が避難し、「就寝中もプライバシーが保てた」などの声が上がった。
市によると、間仕切りの導入は「災害時に授乳できる場所がほしい」という母親らの声がきっかけ。市内各地の防災倉庫に約300個を保管し、今回の台風で初めて使用した。市塩田地域自治センターの小林弘明センター長は「他人の目を気にせずに過ごせる場所を提供できた」と話す。
ただ、食料や水の提供を優先したこともあり、間仕切りは一部の避難所にしか届けられなかった。千曲川の堤防決壊で大勢が殺到した長野市の避難所では、硬い床にブルーシートを敷き、毛布にくるまって雑魚寝する被災者の姿が目立った。
2016年の熊本地震では、プライバシーのない避難所を避け、車中泊を選んだ被災者の健康問題が相次いだ。内閣府は同年、避難所運営のガイドラインを公表し、自治体に避難生活の質を向上させるよう求めた。
地域防災を支援する任意団体「インクルラボ」の高橋聖子代表は、避難所の環境は被災者の生命に直結する問題と指摘。「行政任せではなく、普段から地域全体で整備する努力をしなければならない」と訴えた。〔共同〕