不屈の精神に拍手と涙 ラグビーW杯「勇気もらった」
力を振り絞ったが、届かなかった。20日に行われたラグビーワールドカップ(W杯)準々決勝で、日本代表は南アフリカに完敗し、初の4強入りを逃した。快進撃で何度も歓喜の渦を巻き起こしてきた桜の戦士たち。「一丸となった姿に感動した」「勇気をもらった」。スタジアムで、パブリックビューイング(PV)で、選手の地元で――。ファンらから惜しみない拍手が送られた。
●スタンド
南アの選手がボールを大きく外に蹴り出し、迎えた「ノーサイド」。1カ月に及ぶ日本の挑戦が幕を閉じた。選手たちは円陣を組んで奮闘をたたえ合う。4万8千人超で埋まった東京スタジアム(東京都調布市)のスタンドで、ファンは最後まで声をからし、拍手と涙で健闘をねぎらった。
「日本の勝利への気迫は相手にもプレッシャーになった。この経験は必ず次につながる」。家族5人で観戦した埼玉県所沢市の会社員、平山力さん(60)は感慨深げに話した。
今大会でラグビー好きになったという静岡県沼津市の佐藤杏奈さん(28)は「チーム一丸で戦う姿に感動した。会場のファン同士も和やかでラグビーの文化は素晴らしい」と笑顔を見せた。
外国人ファンも賛辞を送った。南アから母国の応援に駆けつけたポール・サンデルソンさん(43)は「速く情熱的なプレーは素晴らしい。日本にこれだけラグビーを愛するファンがいて驚き。もはや強豪国」と話した。
●花園
高校ラグビーの聖地、花園ラグビー場(大阪府東大阪市)でも、PV会場で大勢のファンが大型スクリーンを食い入るように見つめた。
妻とともに観戦に訪れた神戸市灘区の会社員、宗和司さん(52)は日本の戦いぶりに「胸が熱くなった」という。4年後を見据え、「さらなる高みを目指してほしい」
20日は、大会招致にも尽力した元日本代表監督、故平尾誠二氏(享年53)の命日。現役時代から平尾氏のファンだったという大阪市の会社員、小林佳典さん(59)は「日本開催は平尾さんの功績でもある。代表の活躍を本当に喜び、天国から力を送ってくれたはずだ」と思いをはせた。
●選手地元
鹿児島市の飲食店では、この日も先発したセンター・中村亮土選手(28)の母校、鹿児島実業高校ラグビー部のOBら約30人が試合を見守った。
高校時代、コーチとして指導した同部の富田昌浩監督(42)は「すべてを出し切った試合だった。(中村選手に)ありがとう、と伝えたい」。妥協を許さず練習に向き合う姿勢は今も印象に残る。今大会も「必死のタックルで相手の猛攻を抑え、チームを支え続けた」と教え子をねぎらった。
今大会、世界に快足を見せつけたウイングの福岡堅樹選手(27)。小中学時代に通った学習塾で担任だった神田岳彦さん(49)は、福岡市内のPV会場で観戦した。「たくさんの勇気や感動をもらった。心からお疲れさま」。福岡選手は、現役引退後に医師を目指すことを公言している。「学業とスポーツの両立に悩む子どもたちに夢や希望を与えてくれた」と目を細めた。