検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

日本競馬「1強化」の逆説 遠のく凱旋門賞制覇

詳しくはこちら

20年で「悲願」は「夢」に逆戻りするのか? 10月6日、パリロンシャン競馬場で行われた仏G1、第98回凱旋門賞(芝2400メートル)。3頭が出走した日本勢は、キセキ(牡5)の7着が最高で、ブラストワンピース、フィエールマン(ともに牡4)は12頭中11、12着という惨敗に終わった。

史上初の3連覇に挑み、今回の最大の注目を集めたエネイブル(牝5、英)は、ゴール寸前で地元のヴァルトガイスト(牡5)にかわされて2着。週半ばからの雨で悪化した馬場と予想外の速い流れが各馬の明暗を分けたが、そもそもゲームに参加さえできなかった日本勢の姿は、凱旋門賞制覇が悲願といえるレベルなのか、疑問を抱かせる。

レースを先導したのは、前回のドイツG1、バーデンバーデン大賞(芝2400メートル)を大差で逃げ切ったガイヤース(牡4)。続いたのは前進気勢を抑えられない雰囲気のフィエールマン。2列目にはマジカル(牝4)とエネイブルという前年上位馬が並び、マークする形で今年の仏ダービー馬ソットサス(牡3)とブラストワンピース。ヴァルトガイストはさらに後ろ。出遅れたキセキは同馬の内を、アイルランドの名門、エイダン・オブライエン厩舎のジャパン(牡3)は後方を追走した。

驚いたのは前半のペースで、現地の映像が映した1400メートルの通過は1分27秒79。前年より1秒54速かった。当日の馬場はペネトロメーター(硬度計)の数値が4.1で、日本なら「不良に近い重」。当然、勝負どころで先行勢が次々に失速する。ガイヤースとフィエールマンが失速し、道悪巧者のはずのマジカルも脚が鈍った。

満を持したようにエネイブルが抜け出し、残り200メートル付近で後続に2馬身差。「3連覇成ったか」と思わせたが、ここから失速する。道悪が不安視され、日本でも現地でも人気薄だったヴァルトガイストが一気にかわして最後は1馬身3/4差を付けた。エネイブルを一瞬、脅かしたソットサスが3着で、追い込んだジャパンが4着。同馬と5着マジカルの間は6馬身あり、最後は4頭の競馬だった。

国を問わず、競馬では同じ力学が働く。先に脚を使った方が苦しくなるのだ。人気を背負うのを嫌う陣営が多いのは、「他馬の目標にされるから」。今回のエネイブルもこのわなにはまった形だ。

12頭中4番手から、絶妙のタイミングで抜け出したように見えて、結果的に速いペースでの早仕掛けという形になった。最後の1000メートルは64秒18。前年が59秒91だから、文字通り究極の消耗戦だった。凱旋門賞6勝の名手、ランフランコ・デットーリ(48)の早仕掛けを結果論的に責めるのは酷だろう。

勝ったヴァルトガイストは現地の場外発売公社(PMU)の単勝オッズが13倍で5番人気だった。国内発売は34.4倍で9番人気だが、昨年4着の実績馬で、今年もG1を3戦して1、3、3着の後、前哨戦のフォワ賞(G2)を快勝。評価を下げる材料はないのに、馬場適性を疑問視された。

昨年の香港ヴァーズ5着時に、リスグラシュー(後に宝塚記念優勝)から大きく離されたのも、日本の購入者には印象が悪かった。ただ、血統の字面を見れば父がガリレオで母の父がモンズーン。日本勢と比べて、道悪や消耗戦の適性を低く見られる理由はなかった。

新たな臨戦過程も「馬場が悪すぎ」

日本勢のキセキは先行力が持ち味で、前哨戦のフォワ賞では逃げて4頭中3着と失速していた。今回は出遅れたが、騎乗したクリストフ・スミヨン(38)自身、先行する気はなかったとも見て取れる。判断自体は間違っていなかったが、ゲームに加わることはできなかった。

ブラストワンピースも3着ソットサスの付近を進んでおり、道中の位置取りは悪くなかった。伸びなかったのは力負けだろう。フィエールマンはレース前からテンションが高く、スタート後は前に行きたがる面を見せて先行策。早々に失速し、最後はブラストワンピースからも15馬身離された最下位だった。

勝ち馬との着差は、キセキが21馬身半、ブラストワンピースが33馬身、フィエールマンは48馬身だった。可能性がなくなった時点で騎手は追うのをやめるため、意味のない数字だが、散々な結果を象徴していることは間違いない。

過去にナカヤマフェスタやオルフェーヴルが結果を出した当時と同じ過程を踏んだキセキは別として、問題は残るブラストワンピースとフィエールマンである。ノーザンファーム(NF)生産の美浦所属馬で、普段は美浦とNF天栄(福島県)を往来して調整されている。両馬は今回、札幌記念1、3着の後、9月に英国ニューマーケットに入り、本番前日にパリロンシャンに移動した。

NFが近代競馬発祥の地といわれるニューマーケットを選んだ理由は、坂路やトレッドミル(ランニングマシンの1種。傾斜もつけられる)などの多様な調教施設があり、日本と同様の調整ができる点、さらには馬の数の多さもあったという。中央の所属馬は平素、約2000頭が集まるトレーニングセンターで暮らしており、人間に例えれば大型マンション居住者に近い。仏シャンティイのような馬が少ない環境に置くと、逆に緊張感を失ってしまうという。

今回の調整方法について、NF天栄の木実谷雄太場長は「感触自体は悪くなかった」と振り返る。ただ、何しろ馬場が悪すぎて「(効果を)判断できるレベルでなかったことが残念」と話す。

馬場が極度に悪化した場合、海外ならスクラッチ(出走取消)も可能で、実例も少なくない。だが、今回の2頭はともにクラブ法人所有で、出資者の一部がツアーで現地入りしていた。こうした事情から、スクラッチは現実的な選択肢でなかったが、「撤退していれば、海外の他競走やジャパンカップ、有馬記念に矛先を向けることも可能だった」と木実谷場長は話す。極度にタフな舞台で走った心身の疲労を考えると、両馬の戦列復帰は来年にずれ込みそうだ。

ここ数年、現実から夢へと再び後退?

凱旋門賞創設から来年で100年。第2次大戦による2度の中止があり、今回は98回目だった。日本馬は1969年のスピードシンボリから今回まで、半世紀で26頭が参戦したが2着4回。画期となったエルコンドルパサー(99年)の挑戦を機に、今世紀に入ってからは10年のナカヤマフェスタ、12、13年のオルフェーヴルと、ステイゴールド産駒2頭が計3回も2着に入り、優勝は現実味を帯びてきたかに見えた。

だが、14年以降の流れを見ると、「現実から夢へと再び後退したのでは」という思いにかられる。今回、馬場が悪かったのは確かだが、実は過去4度の2着は全て、今回より決着タイムが遅かった。今年のメンバーの質の高さが、タイムを押し上げた可能性もあるが、もっと過酷な条件を日本馬が克服した例もあるのだ。遠征馬の能力の問題もあるが、高速決着の年の方が、負け方は悪い。毎年、戦える馬を送り、「馬場状態が向く」のを待つのでは、戦略と呼ぶに値しない。

「どの馬を送るか」という選択の部分でも、方向性が固まったようには見えない。06年のディープインパクト(3位入線後失格)やオルフェーヴルは、行った時点で国内トップの地位にあった。だが、今年は春先にアーモンドアイの断念が早々に発表されて、ファンの失望を買った。結果的に正しい判断だったが、問題は「ならばどの馬を送るか」。

ハービンジャー産駒で渋った馬場に強いブラストワンピースも、長距離G1を2勝したフィエールマンも、社台グループの種牡馬集団にいずれは入るが、「エース」とは言い難い。まだ3歳だが、現時点のエース候補はサートゥルナーリアだろう。エネイブルという難敵の存在を考慮しても、今回の2頭は「実験」の色彩が濃く映るが、では本当の勝負の機会はいつ訪れるのか、現在の手法の先にゴールがあるのかが問題だ。

海外で調教と実戦繰り返して成果も

同じNF生産で今年、実りある遠征を続けているのがディアドラ(牝5)である。昨年もドバイ、暮れの香港で3、2着と健闘し、今年は2月の中山記念の後は、海外で5連戦。8月にはナッソーステークス(約1980メートル)で、日本馬として19年ぶり2度目の英国G1制覇の偉業を達成した。日本産馬の英中距離G1制覇は史上初だから価値は高い。

ブラストワンピースと同じハービンジャー産駒だが、昨年は国内の高速馬場で重賞を連勝していた。現地で調教と実戦を繰り返す中で、「欧州の馬場で戦うための筋肉」が鍛えられたと見るべきで、99年のエルコンドルパサーの長期遠征を想起させる。ディアドラは個人所有(馬主は森田藤治氏)。NF関係馬の中でも立ち位置が曖昧で、国内では適性の高そうなレースに、一時期の主戦だったルメールで参戦できない状況もあったが、その点を逆用した格好だ。

NFは将来の主力候補をクラブ法人に集めているが、クラブ所有馬は出資者への配慮から目先の賞金確保が優先され、ディアドラのような長期遠征は難しい。国内ではNFの「1強化」が進む一方だが、強くなるほど、構造的に欧州のビッグタイトルが遠のくように見える。日本競馬の逆説である。

(野元賢一)

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_