萱「全て出せた」、日本の危機救う銅 世界体操
「完璧だった。もう言うことない。練習してきたことの全てを出せた」。自画自賛の嵐で振り返った平行棒は、まさに今大会の萱の集大成といえる出来だった。
一つ一つの倒立を確実に、きっちり止めて次の技へと進んでいく。折り目正しい演技を着地まで徹底できたから、同スコアで並んだ中国のエース・肖若騰を出来栄え点で上回ることができた。
ここで表彰台を逃せば、日本が参加した大会では23年ぶりに個人種目のメダルなしに終わるという瀬戸際だった。「絶対に途切れさせるわけにはいかないと思っていた。もう疲労とか言っていられない」。強い使命感を胸に臨んだ今大会20度目の演技まで、ついにノーミスで戦いきった。
もう一つ、心を奮い立たせたのが反骨心だ。内村航平(リンガーハット)も白井健三(日体大大学院)もいない経験不足のチームで大丈夫か――。そんな口さがない声が耳に届いていたという。「俺だってできる、と5人全員が思ってやった大会。日本がまた強くなれたと思う」
そんな22歳に、水鳥寿思強化本部長は「彼に救われた大会。実力通りというか、それ以上の力を最後まで発揮してくれた」と最大限の賛辞を贈る。逆境で力を発揮し、チームのために戦える男は誰か。それを明確に示すメダルだろう。(本池英人)